1996 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性超好熱菌に由来する超耐熱酵素の分子生物学的解析とその応用
Project/Area Number |
08660100
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 哲夫 名古屋大学, 農学部, 助教授 (20170334)
|
Keywords | 海洋性超好熱菌 / Thermococcus profundus / グルタミン酸脱水素酵素 / アミノ酸配列 |
Research Abstract |
超好熱菌Thermococcus profundusに由来するグルタミン酸脱水素酵素(GDH)のアミノ末端アミノ酸配列に基づきオリゴヌクレオチドを合成し、これをプローブとして本酵素遺伝子をクローン化した。本酵素遺伝子の塩基配列をPCRを用いたcycle sequencing法によって決定した。構造遺伝子は419アミノ酸のポリペプチドをコードしており、その上流には古細菌の典型的なプロモーター配列であるTTTATATA配列、下流には転写終結因子として働くと考えられるpyrimidinerich配列が存在していた。本GDHは中温菌Clostridium difficileのGDHと53%の相同性を有しており、アミノ末端側54-253残基の領域(Domain I)とカルボキシ末端側314-401残基の領域(Domain II)で特に両者間に高い保存性が認められた。Domain Iでは、超好熱菌の酵素においてα-helix領域でのアラニン残基の増加とグリシン残基の減少、loop領域へのプロリン残基の導入が顕著であり、これらのアミノ酸置換によって本GDHが安定化されていると考えられた。一方、Domain IIでは安定化に関わると考えられるアミノ酸置換は認められず、本酵素の特徴である高温下でのα-helixのunfoldingを伴う活性化には、Domain IIが関わっていると推定された。本GDH遺伝子をlacプロモーターの制御下に置き大腸菌で発現させた。生産されたGDHは、元菌由来の酵素と異なりアミノ末端のメチオニンを有していたが、元菌由来の酵素とほぼ同じ性質を示した。また、抗体を用いた解析から大腸菌で発現させた酵素も6量体構造を保持していることが確認された。したがって、本研究により超好熱GDHの超耐熱性と温度依存の活性化機構を大腸菌を用いて蛋白工学的手法により解析することが可能となった。
|