1996 Fiscal Year Annual Research Report
高分子電解質複合ゲルのpH応答性を利用した機能性食品成分放出制御システムの開発
Project/Area Number |
08660159
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
崎山 高明 岡山大学, 工学部, 講師 (70170628)
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Keywords | 高分子電解質複合ゲル / pH応答型膨潤特性 / キトサン / デキストラン硫酸 / 放出制御システム |
Research Abstract |
アミノ基を有する塩基性多糖であるキトサンと種々の酸性多糖から調製される高分子電解質複合ゲルはpH応答型の膨潤特性を示す。本研究では、酸性多糖として硫酸基を有するデキストラン硫酸を用いた場合について、腸管内のpH変化を利用して内包した機能性食品成分の放出を制御するシステムへの複合ゲルの応用の可能性を検討するため、複合ゲルの膨潤特性を解析するとともに、モデル内包物質の放出実験を行った。デキストラン硫酸をキトサンと高塩濃度下で均一に混合後、脱塩して種々の組成の円柱状または球状の複合ゲルを調製した。得られた複合ゲルを窒素雰囲気下で希NaOHまたはHCl溶液中に浸漬し、平行膨潤度(膨潤平衡状態と初期状態の体積比)を測定した。アミノ基と硫酸基のモル比が約1の複合ゲルでは、pH10〜12においてのみ膨潤し、pH・おいた10.5で平衡膨潤度は最大(約300)に達した。浸漬液に170mMのNaClを添加して生理的イオン強度下に置いた場合、複合ゲルはpH7〜9において著しく収縮した。また、ゲル中の硫酸基濃度を低下させると、同じpH領域でより著しく収縮することも明らかになった。このような中性付近における収縮現象には、腸内において内包成分を絞り出して放出を促進する効果が期待される。そこで、アミノ基と硫酸基のモル比が1.4の複合ゲルに機能性食品成分のモデルとしてデキストラン(平均分子量67000)を吸収させ、170mM NaCl存在下、各種pHで放出実験を行った。デキストランの最終放出量に差は見られなかったものの、pH8の方がpH2に比較して放出速度が大きく、ゲルの収縮による絞り出し効果が表れたものと考えられる。ポリグルタミン酸(平均分子量83500)をモデル物質とした場合には、pH8では放出されるが、pH2および5においては放出が大幅に抑制された。以上の結果、本複合ゲルが放出制御システム用の素材として有望であることが明らかとなった。
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