1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08660186
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大手 信人 京都大学, 農学研究科, 助教授 (10233199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 助手 (90293919)
小杉 賢一郎 京都大学, 農学研究科, 助手 (30263130)
徳地 直子 京都大学, 農学研究科, 助手 (60237071)
辻村 真紀 愛知教育大学, 地球環境科学, 助手 (10273301)
武田 博清 京都大学, 農学研究科, 教授 (60109048)
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Keywords | 温帯森林流域 / 水文過程 / 物質循環 / 土壌CO_2ガス / 有機物分解 / 森林生態系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、森林流域の水循環過程における水質の変化過程に生物化学的要因と地球化学的要因がどのように影響しているかを考察し、流域スケールの水文化学モデルを構築することである。モデリングを念頭に置いて、水質形成の統合的な指標としてのpHの決定メカニズムに焦点をあてて現地観測を行った。この観測データに基づいてモデルの構築を試みた。著者は温帯森林流域の水質形成機構を明らかにし、モデルの構築に必要なデータを整備するため、滋賀県南部の桐生水文試験流域において種々の水文過程において水質のモニタリングを実施してきた。この集中観測の過程で、主要な溶存イオンの各水文過程での変化や、降雨イベント時の水文現象に対応する水質の変動が明らかになった。これらの知見に補足する項目として,計画に従い,以下の新たな観測・実験を行った。 1.土壌CO2濃度の時空間分布の測定 2.ライシメーターを用いた表層土壌中の窒素ダイナミクスの測定 3.降雨イベントにおるSiO2とNO3-の濃度変動についての集中観測 これらから得られた観測データに基づき,以下のモデルを構築した。 1.土壌CO2のプロファイル,土壌水中のアルカリ度から地下水・渓流水のpHを予測する一次元数値計算モデル 2.窒素ダイナミクスを炭素の消費過程とカップリングさせた数値計算モデル 3.流域水文過程における種々の溶存物質の濃度変動と降雨イベントにおける変動予測のための濃度計算モデル また,本研究の過程で新たな方向性が示された側面として以下のことがあげられる。モデルの開発に付随して流域の緩衝機能の評価について概念モデルを提示することができた。また,桐生試験地で明らかになった酸緩衝システムと植生の異なる流域のそれを比較することによって,植生の発達が緩衝システムの形成に与える影響について論ずることができた。さらに,世界の種々の気候条件に成立する森林流域における緩衝プロセスを比較解析することによって,その地理的多様性に土壌生成の過程に関与する地形学的な差異が影響していることを指摘することができた。
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