1996 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における窒素循環機構の生物的エネルギー利用からの解明
Project/Area Number |
08660188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徳地 直子 京都大学, 農学研究科, 助手 (60237071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 麻美 京都大学, 農学部, 助手 (60273497)
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Keywords | 窒素無機化過程 / 無機態窒素 / 可水溶性炭素 / 微生物 |
Research Abstract |
森林土壌における窒素の形態変化過程に生物的エネルギー源である炭素源がどのように関わっているかを明らかにする目的で、竜王山森林流域試験地にプロットを設け、調査を行った。本試験地では斜面に沿って土壌中で優占する無機態窒素の形態が異なることが知られており、斜面上部ではおもにアンモニア態窒素が優占し、斜面下部ではおもに硝酸態が優占する。土壌の窒素無機化特性はこの無機態窒素の現存形態に対応し、斜面上部ではアンモニア化速度が大きく、斜面の下部では硝化速度が大きいという顕著な違いがみられた。季節的には、春にこの傾向がより顕著であり、秋には明瞭でなかった。このことは、本試験地がおもな落葉時期が秋であるスギの造林地であることによるリターの質の違いが影響しているものとかんがえられた。すなわち、秋の落葉直後でリターの分解過程の早い段階(C/N比の高い状態)には斜面上の位置に関わらず可給態炭素が存在しており、春の、落葉から時間が経ち分解過程が進んだ段階に可給態炭素量に違いが生じるものと考えられる。 また、これらの地点で土壌層への直接の炭素の供給源と考えられる、リター層を通過した降水を採取し、この溶液に含まれ微生物がもっとも利用しやすいと考えられる可水溶性有機態炭素と有機酸の同定および定量を行った。可水溶性有機態炭素と有機酸は斜面上の位置に関わらず、ともに非常に少なく、ほとんど定量下限にちかい値を示した。また、有機酸含むこれら可水溶性炭素のC/N比は約5.5と微生物体に近い値を示し、このことは可水溶性有機物および有機酸が微生物によるすみやかな分解を受け、非常に不安定なものであることを示していると考えられた。
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