1996 Fiscal Year Annual Research Report
常緑広葉樹林域における渓畔要素の抽出と成立要因の解明
Project/Area Number |
08660193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助手 (00231150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸谷 知己 九州大学, 農学部, 助教授 (40112320)
野上 寛五郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (10038242)
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Keywords | 渓畔林 / 地表変動 / 河川規模 / 礫径 / 冷温帯性樹種 / 攪乱強度 |
Research Abstract |
1.屋久島における照葉樹林帯渓畔林の構成要素と立地環境 屋久島の照葉樹林域において、山地小渓流沿いの森林構造を12地点で調査し、同地域内の尾根部および斜面の計32地点で調査された植生と比較した。渓畔林は尾根部および斜面の森林と比較してシダ類が豊富で種多様性が高く、ヤクシマアジサイやサクラツツジなどが特徴的に認められた。渓畔林は河川規模と地表変動履歴により以下の4タイプに分類できた。1)河川規模が小さく(川幅<約10m)河床に段丘上堆積物が存在する渓畔林:堆積物の礫径が変異に富み、マトリックスを含む堆積物上にはシマサルスベリの林冠木が成立する。2)河川規模が小さく河床に段丘状堆積物が存在しない渓畔林:ほとんどが小集水域の0〜2次谷であり、地表変動の形跡がみられない。林冠層の組成は斜面とほとんど同じである。タイプ3:河川規模が大きく(川崎>約10cm)両岸をV次谷を形成する渓畔林:河岸のマトリックスを欠く巨礫上のみにサツキやヤクシマアジサイが出現する。林冠層には冷温帯性樹種が混入する。4)河川規模が大きく河岸に緩傾斜地が存在する渓畔林:マトリックスを含む堆積上に、暖温帯性樹種と冷温帯性樹種が混成する。種多様性は極めて高い。 2.霧島山麓の照葉樹林帯における渓畔林の構造と立地環境 霧島山麓の小扇状地周辺で森林構造を調査した。V次谷の森林構造は斜面とほぼ同じであったが、河床の段丘状堆積物および扇頂部の巨礫堆積物上には、ミズキ、ケヤキなどの冷温帯性樹種が林冠を構成していた。扇央部から先端部の砂礫堆積物上には、、斜面と同様の植生がみられ、攪乱の強度が冷温帯性樹種を種とする渓畔林の成立を規定していると考えられた。
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