1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08660227
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Research Institution | FACULTY OF BIORESOURCES,MIE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
河村 章人 三重大学, 生物資源学部, 教授 (10111163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 靖彦 国立極地研究所, 教授 (80017087)
吉岡 基 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (30262992)
白木原 国雄 三重大学, 生物資源学部, 教授 (90196618)
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Keywords | ネズミイルカ / マイクロデータロガー / ハンドウイルカ / マッコウクジラ / 呼吸代謝 / ADL / 天草通詞島 / 熊野灘 |
Research Abstract |
最終年度を迎えるのでつめの作業を中心に経過した。しかし、本研究が中心としたネズミイルカの遊泳行動解析については、特に潜水生理面でのデータ整理を着実に行った。ネズミイルカがほとんど水面での休息なしに連続的に潜水する行動をとっていることが判明したが、その理由の説明に酸素消費と遊泳速度を考究した。酸素消費率は遊泳速度が約1.2m/s以上になると速度の増加につれて増加する。このことから運動エネルギー・コストが最小となる遊泳速度は1.4m/sでその時のエネルギー・コストは2.25±0.05kJ/kg/minであることがわかった。これまでに得られた関係諸データから自然環境下におけるネズミイルカの一日あたりのエネルギー消費量は、9,292kJ/day-13,015kJ/dayと推定された。また、 ネズミイルカの体内酸素保有量と酸素消費率から有酸素代謝潜水限界(ADL)は運動量や摂餌の有無で変化するが、約2.6-4.6分であると推定された。本種の遊泳速度と潜水時間には負の相互関係があり、実際に自然環境下での遊泳行動はその殆どがADL以内に収まるものであった。すなわち、ネズミイルカにおいては無酸素代謝がないことである。このことが連続的な潜水行動を可能としている理由である。ちなみに、ADLを超えたのは全潜水記録の0.5%に過ぎない。また、分担研究者(白木原)は九州島原湾のハンドウイルカ個体群の群としての行動解析を行い、潜水、浮上、逃避、休息、採餌などの行動のカテゴリ化を進めてきた。さらに、別の分担者(吉岡)は熊野灘海域に来遊するマッコウクジラの個体識別などを実施し、ここに来遊する群がかなり定常来遊性があるらしいことを見出しつつある。これら両研究は、今後ネズミイルカで行ったデータロガーを用いる行動研究から更に発展させて新たなる研究対象に迫るフィールドが成立する可能性を示唆するものとなった。機器の開発、改良面では分担者(内藤)が推進しつつあり、特にデータロガーにビルトインされる速度計の改良・開発やデジタル方式による映像情報をも付加する新技術の開発途上にいたっている。
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[Publications] 大谷誠司ほか: "飼育下におけるネズミイルカの酸素消費" 国際海洋生物研究所報告. 8. 65-71 (1998)
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[Publications] Suzuki,M.ほか: "Serum cortizol lovels in oaptive killer whele and bottle nose dolphin" Fish.Sci.64 4. 643-647 (1998)
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[Publications] YOSHIDA,H.ほか: "Finless porpoise abundance in Omura Bay, Japan" Jour.Wildlife Management. 62 1. 286-291 (1998)
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[Publications] 白木原美紀・白木原国雄: "天草通詞島周辺海域におけるハンドウイルカの生態調査" 月刊海洋. 30・9. 568-571 (1998)