Research Abstract |
遊泳状態のコイから,経時的に採尿および採血・血圧記録を行い,環境変化に伴う尿性状や循環関連指標の変化を追跡した。魚に負荷する環境条件は,溶存酸素濃度の低下,絶食,高水温および飼育密度の上昇とした。一部個体では,脳表面および腎臓表面・内部にレーザー血流プローブを取り付け,部位毎の血流量変化を調べた。また,同様の環境を負荷した個体を経時的に取り上げ,脳および腎臓のモノアミン含量の測定に供した。 溶存酸素の著しい低下により,腎全体の血液流量は減少し,糸球体濾過量,尿量も著しく減少した。しかし,局所的には血流量の大きな変化が認められない部位もあり,その部位では酸素濃度が他所に比べて高いこと,血球の量および体積の増加により有効血漿流量は減少していることが判った。絶食では,腎全体で血流量の減少がみられ,腎各部の差も減少した。高水温では,腎全体の血流量は増加したが,腎周辺部での変化が大きかった。飼育密度の上昇は,一部の魚にストレスを引き起こし,当該個体の腎機能は低下した。 脳内モノアミンでは,環境条件の変化に伴い,3,4-ジヒドロキシフェニル酪酸(DOPAC),ドーパミン(DA),ノルエピネフリン(NE),セロトニン(5-HT),5-ヒドロキシインドール-3-酢酸(5-HIAA)に有意な変化が認められた。すなわち,溶存酸素の低下はDAおよび5-HT濃度の低下を,絶食はDOと5-HTの低下を,高水温はDOPACの上昇と5-HIAAの低下を,飼育密度の上昇はDAの上昇と5-HT濃度の低下を引き起こした。これらの変化は,脳内の終脳および視床下部の部位で大きかった。腎臓内では,一部のモノアミンは異なった変化を示したが,基本的には類似した変動パターンを示すことが多かった。加えて,エピネフリン(E)の変化がこれに加わったが,その値は絶食を除く他のストレス時には有意に上昇した。現在,各モノアミンの変動パターンと腎機能変化の関連について検討中である。
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