1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08660246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 勝子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30092381)
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Keywords | 水産動物 / エキス成分 / 遊離アミノ酸 / D型アミノ酸 / D-アラニン |
Research Abstract |
近年、微生物から高等動植物に至る多くの生物に種々のD型アミノ酸が見出されている。水産動物でも遊離D型アミノ酸が調べられているが、量的に多いのはD-アラニンで、その分布は動物群によって異なることが示唆されている。この点に着目し、研究例の少ない水産動物における遊離D-アラニンの分布に関する基礎的データを蓄積するために本研究を企画した。 食用種のみならず、これまでに分析されていない水産動物を採集し、可能な限り組織別に80%エタノールエキスを調製した。DおよびL-アラニンの分析はNacalai tesque社製Cosmosil 5C18-MSパックドカラムを用いるHPLCで行った。 扁形動物のイイジマヒラムラにはD-アラニンは検出されなかった。軟体動物の双神経類に属するヒザラガイ2種を分析したが、D-アラニンは痕跡認められたにすぎなかった。貝殻類の腹足類ではこれまでの結果からD-アラニンは生存しないと考えられていたが、中腹足類に属する種では多くの組織にかなりの量のD-アラニンが検出され、今後原始腹足類や新腹足類について分析し直す必要があると考えている。また、後鰓類の無盾類に属するアメフラシでは内臓器官と胃内容物に微量のD-アラニンが検出されるものの外套膜、生殖線、鰓などには認められなかったが、同じアメフラシ科のタツナミガイの諸組織には比較的多く検出され、D/D+Lは0.13〜0.43となり、その値は外套膜および内臓器官で特に高かった。節足動物の甲殻類に属するエビ・カニ類には多量のD-アラニンが認められているが、フジツボ類にはほとんど検出されなかった。さらに、棘皮動物のウニ生殖線にも多量のD-アラニンが検出されているが、ヒトデ類では少なかった。このように、水産動物ではD-アラニンを多量に蓄積する動物群とそうでない動物群に分かれることが判明した。この点をより明確にするために、今後さらに広範囲にしかも系統的に水産動物を採集し、D-アラニンの分布を調べることとする。
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