1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08660263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田代 洋一 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (00092651)
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Keywords | 兼業農家 / 世代承継性 / 家計構造 / 目安労働評価 |
Research Abstract |
ここ10年間の兼業農家の動態過程の追跡を主眼として、佐賀県芦刈町西道免30戸の全戸追跡調査を行なった。 兼業農家の世代継承性という点では、この地域では大きな変化はみられなかった。すなわち世帯主は年金等との関連で世帯主名義は変えるものの、死ぬまで実質的に世帯主であり続ける。世帯主の後継者の多くは常勤兼業であり、10年前の板紙加工など地場産業から公務員、自営業等総じて職種はより安定的なものに移行しているが、定年後あるいは父が働けなくなったら跡を継ぐというのが圧倒的である。2ha規模でも夫婦で常勤がめずらしくないが、その場合にも農地は貸し付けたり作業委託したりせず、米麦を自作している農家が多い。 兼業農家の家計構造としては、典型的には、70代の世帯主夫婦が米麦代金と息子夫婦からの家計繰り入れ10万円で「いえ」としての家計をまかなう。新聞・テレビ・水道・電気代は農協引落しなので世帯主の負担となる。いえの交際費もそうである。息子夫婦は、親に10万円渡したあとは、子供も費用、自分たちの日用品、そして副食費を負担する。このような明確な分担関係が10年間における変化である。 さらに変化が見られるのは、自家労働評価である。10年前は人夫賃並みが多かった。今回も基準は人夫賃が相当みられるが、夫婦各10,000円水準となっている。さらに公務員並みとか、経営改善計画における800万円とか、子供は大学にやるので現在ではサラリーマン並みが必要で、夫婦1日40,000円というように上昇している。 このような兼業農家の強い農業の世代継承志向と、他方で上層農家の牛や繁殖経営や肥育経営が飼料作依存でないことが、この地域の農業構造を停滞的ならしめている。
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