1997 Fiscal Year Annual Research Report
条件不利地域農業問題に関する地代論的研究-日欧の比較をつうじて-
Project/Area Number |
08660275
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
溝手 芳計 山口県立大学, 社会福祉学部, 助教授 (00174053)
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Keywords | 条件不利地域 / 地代論 / 差額地代 / EU / 中山間地域 / デカップリング / 農業政策 |
Research Abstract |
1.中山間地域における土地改良と農地の荒廃との関連等について検討した。 (1)概してほ場整備の実施率の高い市町村ほど農地の荒廃が少ない。 (2)中山間地域は、急傾斜地で小団地が分散し地形が複雑という土地条件に規定されて、ほ場整備の際に、整地工費単価が割高、道水路の路線密度が高く、平均して平地の約1.4倍のコストを要し、畦畔や道水路の法面が長大になるほど、困難要因が多い。 (3)また、中山間地域では、ほ場整備の実施に消極的意見をもつもののなかに、農業での採算を重視する規模拡大農家が目立ち、現状ではほ場整備等によって中山間地域の農地を優等地に引上げ耕境後退をくい止めることは困難であることがわかった。 2.上記の事実を念頭に置きつつ、EUにおける条件不利地域農業対策について考察した。 (1)EUの条件不利地域対策の起源は、戦時イギリスにおける増産対策としての丘陵地農業への直接助成にあり、食糧自給率が40%前後という日本の現状と共通する。 (2)しかし、近年EUの条件不利地域対策を含む直接所得保証が注目されるようになったのは、過剰が背景となったデカップリングとしてであり、日本の現状とは背景が異なる。 3.以上を踏まえて、日本の条件不利地域対策のあり方を地代論的に考察した。 (1)地代論的には、条件不利地域の農業問題とは、最劣等地ないしそれ以下の農地の集中する地域における耕境後退問題であり、食糧が自給できていない日本の現状を踏まえた適切な農産物価格政策を前提とした施策が必要である。 (2)それでも維持できない条件不利農地について直接所得補償を実施すべきである。しかし、それには、農地の公共機能や社会政策的観点から国民的合意形成が不可欠であって、農地利用のあり方についてもそうした機能を優先した方法が求められよう。
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