1996 Fiscal Year Annual Research Report
農地生態系における硝酸態窒素の溶脱と、それにおよぼす水循環の影響
Project/Area Number |
08660301
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
武藤 勲 宮崎大学, 農学部, 助教授 (70040863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊満 幸雄 宮崎大学, 農学部, 助手 (70197979)
杉本 安廣 宮崎大学, 農学部, 教授 (20041030)
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Keywords | 硝酸態窒素 / 土壌水分 / 溶脱 / 脱窒 |
Research Abstract |
バヒアグラス草地を対象に,多雨期の8月と小雨期にはいる10月の両時期に牛尿を施用し、生成された硝酸の土壌中における移動、ならびに硝酸移動と土壌水分の相互関連を検討し次の知見を得た。対象地では、地表から70cmより深い土層(下降移動層と称す)の水分は常に下降移動している。下降移動層に分布する硝酸態窒素は植物に吸収されない限り下降移動し、溶脱するか、もしくは一部脱窒により損失する。 8月施尿地では下降移動層の硝酸態窒素は時間の経過とともに増え続け、9月中・下旬の発生した19日間で614mmの大量降雨の直後に最高値に達した。下降移動層が含む硝酸能窒素の最高値は21.5gで、施用した尿窒素60gの38%に相当した。 10月施尿地では、下降移動層の硝酸態窒素は8月施尿地に比べて相当に遅い速度で増え続けた。下降移動層の硝酸態窒素は多雨時期への移行期にあたる4月下旬に最高値に達し、その時の硝酸態窒素量は34.9gで尿窒素60gの58%だった。 以上のように、尿施用後の降雨量と土壌水分の多い8月施尿地が下降移動層への硝酸態窒素の移動も速かったが、下降移動層に達した窒素量は10月施尿地が高い値を示した。10月施尿地の場合はバヒアグラスによる窒素吸収が少なく、アンモニア揮散による損失も少ないために土壌に残存する窒素量が8月施尿地に比べて多く、その窒素が少水分の環境下で緩慢に下降移動して損失する量は多いことを示している。 70cmより深い土層に分布するバヒアグラスの根は10%以下とて少なく、下降移動層に達した硝酸態窒素はほとんど根には吸収されないと思われる。脱窒も損失経路の一つであるが、本研究の下降移動層のような70cm以深の土層では脱窒による損失は少なく、むしろ大部分の窒素は溶脱により下降移動し地下水へ流入すると推察されるが、この点に関してはさらに検討の必要がある。
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