1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトホメオボックス遺伝子の異所的発現を誘導されたマウス神経冠細胞の発生
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08670036
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
谷口 泰史 東海大学, 医学部, 講師 (30207188)
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Keywords | ホメオボックス遺伝子 / HOXD3 / 細胞接着 / インテグリン / カドヘリン / Wnt-1遺伝子 / 神経冠細胞 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
本研究では、マウス胚の発生過程でヒトHOXD3遺伝子を異所的に発現させた場合、その発生がどのような影響を受けるのかということが解析された。具体的には、ヒトHOXD3遺伝子にマウスWnt-1遺伝子のプロモーター及びエンハンサー領域を連結した組み換えDNAを作成し、それをマウス受精卵の雄性前核に微量注入することによって、トランスジェニックマウスを作った。このマウスでは、8.5日胚のmesencephalon(中脳に発生する部分)の大部分とmetencephalon(小脳に発生する部分)の一部でヒトHOXD3遺伝子が異所的に発現する(マウスHoxd-3遺伝子は、将来発生してくる中枢神経系のrhombomere菱脳5より体の後方側で発現する)ことが期待される。また、神経管の最も背側の部分から分離して生じるマウス神経冠細胞においても、ヒトHOXD3遺伝子を発現させることができる。神経冠細胞は、胚体内を移動して、末梢神経系や自律神経系の神経節、甲状腺濾胞細胞や副腎髄質細胞に代表される内分泌細胞など、様々な組織に分化することが知られている。また、神経冠細胞の移動と分化には、カドヘリンやインテグリンなどの細胞接着因子の発現のスイッチングが鍵となる役割を果たしていると考えられている。従って、ヒトHOXD3の発現によってマウス神経冠細胞の接着、移動及び分化がどのような影響を受けるのかを解析することは、発生生物学上の極めて興味深いテーマの一つであると思われる。
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