1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08670043
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉塚 光明 久留米大学, 医学部, 教授 (30131791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間 克麿 久留米大学, 医学部, 助手 (80212348)
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Keywords | 有機スズ化合物 / 細胞毒性 / 腎臓 / 形態形成 / 微細構造 |
Research Abstract |
トリプチルスズは、船底塗料や養殖漁業における生簀・魚網の防汚剤として広く使用された有機スズ化合物である。本研究を遂行にするに当り、母体が摂取したトリプチルスズ化合物が胎児・哺乳児へ移行するか否か、もし移行するとすれば、周産期に進行する各種臓器の形態形成過程に、本化合物の毒性が如何なる影響を及ぼすか、さらに妊娠・授乳期における有害物質の侵襲に対して生体が如何なる反応を示すかを超微形態学的に明らかにすることを目的として、以下のような実験を行なった。 妊娠18日および出産後2日授乳中の雌ラットに、体重1kg当り0.05mlのトリブチルスズオキシドを経口投与し、投与後経時的に、母体、乳児、哺乳児の血液を採取してガスクロマトグラフィにより血液中のスズ濃度を測定した。またそれぞれの腎臓を採取して電子顕微鏡試料に供した。 母体の血中スズ濃度は、妊娠中、授乳中いずれも投与1時間後から上昇をはじめ、8時間で最高値(250ppb)に達した後、急速に下降して24時間後には血中から消失した。胎児血からはスズは検出されなかった。哺乳児の血中スズ濃度は母体投与4時間後から上昇して16時間後に最高値に達した後、急速に下降して30時間後には検出不能となった。生後2日の哺乳ラット腎臓には、様々な発育段階のネフロンが存在する。電顕観察で、比較的成熟した近位尿細管上皮細胞に、血中スズ濃度の上昇に一致して電子密な水解小体の著しい増加とその融合による空胞形成を認めた。一部の尿細管上皮細胞は空胞変性に陥り、糸球体を含む細胞小器官の残渣を管腔内に認めた。トリブチルスズが乳汁を介して哺乳児に移行し、腎臓から排泄される過程で近位尿細管の一部が傷害されれるものと考えられる。現在進行中の乳汁および尿の分析を含めて投稿の予定である。
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