1998 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質の一酸化窒素産生率測定法の開発と,脳循環防衛反応研究への応用
Project/Area Number |
08670073
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
中井 正繼 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 室長 (90150226)
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Keywords | 一酸化窒素 / 大脳皮質 / 脳血流量 / ムスカリン受容体 / 興奮性アミノ酸受容体 / NMDA受容体 / 中心灰白質 / マイネルト核 |
Research Abstract |
中脳中心灰白質は多彩な防衛反応を統合する最高位中枢であることが確立しているが,当課題研究において中心灰白質は防衛反応の一表現として皮質血流量も増加させることをラットについて発見し報告した.次にこの現象に関わる機構の詳細を調べた結果,中心灰白質は(1)皮質血流量増加はマイネルト核を起始とするコリン作動性皮質投射,(2)皮質においてその軸策終末に直列に接続しムスカリン受容体を持つ興奮生アミノ酸作動性ニューロン,(3)およびそれにやはり直列に接続しNMDA受容体を持つ血管運動機構を利用して皮質血管を拡張し脳血流量を増加させることを解明した.さらに血管運動機構としては,少なくとも皮質エネルギー代謝が促進することに基づいた代謝性機構,および皮質一酸化窒素(以下NO)産生機構の2者が関与していることを明らかにした. ここまでの研究ではNOの関与をNO産生酵素を阻害剤で遮断する方法で評価したが,本年度は皮質におけるNO産生を定量的に評価することを試みた.方法はラット大動脈および上矢状静脈洞から血液を採取し気密下に熱処理することによって一酸化窒素および関連化合物をすべて亜硝酸窒素および硝酸窒素に変換し,グリース法に基づいた液体クロマトグラフ法で一酸化窒素の定量を行った.もし動脈血液よりも静脈血液のNO量が多ければ,皮質がNOを産生していることが定量的にわかる.そこで中心灰白質を強力に刺激したところ皮質血流量は基礎状態から110±18%(mean±SD,n=5)もの増加を来たしたにも関わらず,動静脈血液NO量の差は全く検出できなかった(刺激前動脈値35.0±4.0μM,動静脈較差:-0.15±0.66μM:中心灰白質刺激中動脈値36.8±4.9μk,動静脈較差:-0.20±2.14μM). 結論:どの様に強力な刺激でもそれが生理的範囲内である限り,皮質で産生され血液中に放出されるNO量は,血液に元々含まれている基礎量に比較してわずかであるため,検出は困難である.
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