1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08670103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
漆谷 徹郎 東京大学, 薬学部, 助教授 (40262159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 拓 東京大学, 薬学部, 教授 (30217971)
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Keywords | 酸分泌 / 壁細胞 / H,K-ATPase / 細胞骨格 / αトキシン / 小胞輸送 / ウサギ |
Research Abstract |
本研究は本質的には予試験であって,その目的は,胃酸分泌細胞である壁細胞をモデル系として用い,小胞輸送機構解明のための新たな実験系を立ちあげることにあった.そのために,計画は次の2点について行われた. 1.ホールセルクランプ法による小胞融合評価系の確立 細胞の膜容量を微小電極法で測定するには,単離した細胞を生理機能を保ったままマトリックス上に固定して培養する必要がある.これまでの方法では,単離操作により細胞の極性が失われ,培養後に酸分泌機能が失われて、細胞内小胞輸送を観察することが困難であった.そこで今回我々は,ウサギ胃粘膜から単離胃底腺を調製し,これをマトリゲルコートしたカバーグラスに播くことによってこの問題を克服した.この方法によれば,培養中に壁細胞を胃底腺から自然に遊走脱離し、マトリゲル上に極性を保った状態で付着した.蛍光色素アクリジンオレンジの集積で見ると,ヒスタミン刺激により培養壁細胞内に酸性の小胞が形成されるのが観察され,生理機能が保持されていることが確認された.また,標識アミノピリンの集積率を指標にした酸分泌能の検定,更にカルシウム蛍光指示薬を用いた細胞内カルシウム濃度測定によっても,培養壁細胞は種々の酸分泌刺激薬に反応することが確認され,モデル系として使用可能であると考えられた.また,壁細胞内の細胞骨格系は培養細胞とすると乱れることが知られているが,細胞内FアクチンをFITCファロイジンで標識して共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより,我々の培養壁細胞においては,胃底腺内におけるものと同様の細胞内分泌小管が形成されており,細胞骨格系の形状が保たれていることも明らかとなった.現在この系を用いて,微小電極法による膜容量測定の基礎検討を行っている. 2.細胞膜透過性細胞を用いた評価系の確立 ジギトニン透過性単離胃底腺標本は,透過性を与える前の刺激状態に応じて,細胞内膜系の変化を検討できるモデルである.しかし,細胞膜透過性を与えた後に刺激しても細胞の応答性が失われているためにその使用には制限があった.そこで,αトキシンで透過性を与える基礎検討を行ったところ,透過後にH2受容体,M3受容体刺激を行っても酸分泌の活性化が生じるような条件を見いだすことができた.現在このモデルを用いて,小胞輸送をモニターする実験を行っている.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Urushidani,Y.Muto,T.Nagao,X.Yao,and J.G.Forte: "ME3407,a,new antiulcer agent,inhibits acid secretion by interfering with intracellular redistribution of the gastric proton pump." American Journal of Physiology. (in press). (1997)
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[Publications] 漆谷徹郎・武藤祐子・長尾拓: "「消化管ホルモン」ウサギ壁細胞酸分泌活性化における細胞骨格系の役割" 群馬大学生体調節研究所・伊藤 漸(印刷中), (1997)