1997 Fiscal Year Annual Research Report
膵腫瘍にみられるアポトーシス等の退行性病変と悪性化因子についての形態学的検討
Project/Area Number |
08670218
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
諸星 利男 昭和大学, 医学部, 教授 (10102378)
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Keywords | 膵腫瘍 / 悪性度 / 予後因子 / アポトーシス / TUNEL法 / 増殖能 |
Research Abstract |
膵癌は一般に極めて悪性度の高い腫瘍であるが、SC腫瘍、膵管内乳頭腫瘍、膵内分泌腫瘍等良好な経過をとる腫瘍も少なくない。また膵管内乳頭腫瘍や膵粘液嚢胞性腫瘍のようにadenoma-carcinoma-sequneceが示唆される腫瘍も存在する。これらの事実は膵腫瘍の悪性度や予後判定には通常の診断に加えて、分子生物学的側面よりアポトーシスや増殖能等の因子についての検索を行う必要があると思われるので以下の検討を計画した。(材料および方法)各種膵内分泌腫瘍合計104例(内分泌腫瘍46例、外分泌腫瘍58例)について光顕的、電顕的および免疫組織化学学的方法を利用して形態学的な側面から検討を加えた。アポトーシスの検索についてはTUNEL法を利用し、一部の症例については電顕的検討を行った。増殖能を検索する目的でPCNA陽性率、核分裂像およびKi-67陽性率を参考とした。(結果および考察)壊死性病変は通常型膵管癌、悪性内分泌腫瘍、腺胞細胞癌およびSC腫瘍に比較的大量に認められた。TUNEL法によるアポトーシスの出現はかなり低く、弱陽性例を含めて膵腫瘍全体の20%程度に認められた。特にSC腫瘍では出現率が高く75%に確認された。次いで侵潤性膵管内乳頭腺癌や通常膵管癌に比較的多く認められた。膵内分泌腫瘍に関しては悪性例に比較して良性腫瘍にやや強く認められた。電顕的にも一部膵腫瘍にアポトーシス小体が確認されたが、中でもSC腫瘍に多く認められた。すなわちSC腫瘍にみられる大量の壊死性病変はアポトーシスによる可能性が強く示唆された。細胞核分裂像出現率やPCNA陽性率等で表現される増殖能は悪性度とよく比例していた。PCNA陽性率は通常型膵管癌に高く、次いで腺胞細胞癌や侵潤型の膵管内乳頭腺癌、更に膵芽腫の順であった。非侵潤性膵管癌や膵管内乳頭腫瘍、悪性膵内分泌腫瘍、およびSC腫瘍症例におけるPCNA陽性率は比較的低く、同程度であった。以上の結果増殖能と悪性度との間には関連性が強く示唆された。しかし悪性度および増殖能とアポトーシスとの関連性は一部の症例を除いて少なく、膵腫瘍全体からみると悪性度とアポトーシス出現の関連性を強く示唆する所見は乏しいと思われる。各種膵腫瘍に認められるアポトーシスの意義については今後さらに検討を加える必要があると考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 諸星 利男: "膵臓癌の増殖能と分子生物的特徴" 肝 胆 膵. 34.3. 305-312 (1997)
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[Publications] 国村 利明: "膵内分泌腫瘍の病理" 臨床消化内科. 12.9. 813-819 (1997)
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[Publications] 諸星 利男: "最新内科学大系プログレス9肝・胆・膵疾患" 中山書店, 7 (1997)
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[Publications] 諸星 利男: "標準病理学" 医学書院, 10 (1997)