1997 Fiscal Year Annual Research Report
プログラム細胞死による神経芽腫消退に関する基礎的・応用的研究(新治療戦略の開発)
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08670222
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
小泉 宏隆 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10215155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
打越 敏之 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (60130986)
中田 幸之助 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70081734)
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Keywords | 神経芽腫 / 自然消退 / アポトーシス / Fas / Fasリガンド |
Research Abstract |
【目的】我々は神経芽腫(NB)に高率にアポトーシスが発生し、一部腫瘍の自然消退現象に密接に関連していることを報告した(Virchows Arch,427,167,1995)。本研究では、NBにおけるアポトーシス誘導分子、Fasリガンド(FasL)およびその受容体であるFasの発現様式を検討した。 【方法】NB症例46例を対象とした(stage I:12例、II:9例、III:10例、IV:11例、IV-S:4例)。各腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋材料より連続切片を作成し、microwavingによる抗原賦活化の後、マウス抗ヒトFasL(クローン33)およびFas(同APO-1)モノクローナル抗体を用いた免疫ペルオキシダーゼ染色を施行した。染色結果は全腫瘍細胞に対する陽性細胞の比率に応じ<5%:1+、5-50%:2+、>50%:3+として評価した。また、10例のNB凍結材料を用いたFasLウエスタンブロットも同時に施行した。 【結果】FasLは検索全例の腫瘍細胞に発現しており、その強度は1+:15例、2+:11例、3+:19例であった。FasL発現は神経芽腫・節芽腫あるいは stage II〜IVで強い傾向にあったが、Shimada分類との関連はみられなかった。Stage IV-S例は3例がFasL/2+、1例が3+発現を呈していた。ウエスタンブロット分析では10例中8例に約40kDaのFasL蛋白バンドが検出された。一方、Fasはホルマリン固定により失活しやすくパラフィン切片上での検出は困難とされるが、tyramide増感などの併用により現在までに19例が検討可能となっている。これら全例でFas発現は1+レベルに留まり、陽性細胞の局在はアポトーシス発生部位に一致していなかった。また、腫瘍浸潤リンパ球の一部に強いFas発現を認めた。 【考察】NBはFasLを好発現するが、Fasは少数の非アポトーシス部腫瘍細胞にのみ存在し、同腫瘍におけるアポトーシスはFas経路の関与なしに発生していると考えられた。また、腫瘍性FasLがFas陽性リンパ球を標的として癌免疫を回避している可能性が示唆された。
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