1996 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマーβアミロイド線維伸長を阻害するペプチドの開発,及び生理物質の探索
Project/Area Number |
08670242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
内木 宏延 福井医科大学, 医学部, 助教授 (10227704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中久木 和也 福井医科大学, 医学部, 教授 (90024629)
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Keywords | アルツハイマー病 / βアミロイド線維 / アポリポ蛋白E / 重合核依存性重合モデル / 一次反応速度論モデル / 分光蛍光定量法 / チオフラビン T |
Research Abstract |
1.緒言:アポリポ蛋白E(apoE)は、アルツハイマー病発症機構の中心に位置する分子と考えられているが、βアミロイド線維(fβ1-40)の試験管内形成に及ぼす効果については、阻害・促進両方の効果が報告され、統一見解が得られていない。我々は既に、fβ1-40伸長の一次反応速度論モデルを確立している(Naiki & Nakakuki,Lab Invest 1996,74:374-383)。このモデルは、fβ1-40伸長が、既に存在するfβ1ー40の端に、前駆蛋白質であるβペプチド(β1-40)が次々に結合することにより起こる事を示している。今年度は、同モデル、及び重合核依存性重合モデルを基に、fβ1-40形成に及ぼすapoEの効果について解析した。 2.方法、及び結果:(1)fβ1-40の定量は、チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法により行った。(2)50μMのβ1-40をpH7.5、37°Cで反応させると、蛍光は一定のラグタイムを伴うシグモイド曲線を描いて増加し、fβ1-40を形成した。この曲線は、重合核依存性重合モデルに従えば、順に重合核形成相、線維伸長相、及び平衡相より成る。(3)上記反応液に50-500nMのリコンビナントヒトapoEを加えると、上記重合核形成相、線維伸長相とも、apoE濃度依存性に阻害された。(4)fβ1-40伸長に対する阻害効果を、上記一次反応速度論モデルを用いて解析すると、apoEは、β1-40と高親和性複合体を形成し、フリーのβ1-40濃度を減少させることにより、線維伸長を阻害することが明らかになった。(5)K_i値は、apoE2、E3、E4で有意差無く、約0.37-0.39μMであった。 3.結語、及び来年度計画:今年度の研究により、apoEが脳内βアミロイド沈着の生理的阻害物質である可能性が示唆された。来年度は、分子シャペロンと称される一群の生理物質のfβ1-40形成に及ぼす阻害・促進効果について、上記モデルを基に解析する予定である。
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