1996 Fiscal Year Annual Research Report
恙虫病リケッチアのマウスへの感染に対する宿主感染防御機構の解析
Project/Area Number |
08670323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
多村 憲 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (50027314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 正博 新潟薬科大学, 薬学部, 助手 (70238509)
浦上 弘 新潟薬科大学, 薬学部, 助教授 (80139732)
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Keywords | Orientia tsutsugamushi / マクロファージ / 感染防御 / 恙虫病リケッチア / 一酸化窒素産生 |
Research Abstract |
恙虫病病原体であるOrientia tsutsugamushiには、これをマウスに接種したとき、マウスは発症して死亡する強毒株と、マウスは殆ど無症状のまま経過して生存する弱毒株が存在する。このような病原性の差異の原因を解明する目的で、本研究では強毒株と弱毒株をマウスに接種したときの生体側の感染防御応答の差異とその際に見られる病原体の挙動を観察した。得られた結果は以下のように要約される。(1)強毒株であるKarp株をBALB/cマウス腹腔内に接種したとき、マクロファージや好中球などによる宿主の生体防御機構は活発に稼働するが、病原体はそれらの抗菌作用に打ち勝って増殖し、マウスを斃すに到るのに対して、弱毒株であるKuroki株の感染では、病原体はマクロファージ中で殺戮され、マウスは生存するという結果を得た。すなわちマクロファージ中での強毒株及び弱毒株の増殖の可否が病源性の発現に大きく係わっていることが示唆された。(2)マウス滲出マクロファージ培養系での両株の増殖性を比較したところ、予想されたように強毒株は旺盛に発育したが、弱毒株は殆ど増殖せず、両者に大きい差異が認められた。(3)マクロファージ様株化細胞であるRAW264.7,PU5-18,J774.1細胞を用いて同様の検索を行ったところ、これらの細胞でも強毒株の増殖と弱毒株の増殖抑制が認められた。(4)最近生体の感染防御反応に関与しているとされるNO(一酸化窒素)の産生の有無を、強毒株及び弱毒株感染RAW細胞について測定した。その結果、強毒株の感染ではNO産生は抑制されているのに対し、弱毒株の場合には顕著なNO産生が認められた。この結果は強毒株の場合には何らかの機構でNO産生が抑制されることにより、その増殖が順調に進行するが、弱毒株の場合にはNO産生が誘発される結果、その増殖が抑制されるという可能性を示唆した。
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[Publications] 多村憲: "恙虫病と恙虫病リケッチア:特にリケッチアの伝播機構と抗原型の多様性" 衛生化学(Japanese J. Toxicol. Environ. Heal.). 41(3). 179-193 (1995)
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[Publications] A.Tamura 他2名: "New species of Neotrombicula (Acari : Trombiculidae) from the southern Primorye territory,Russian far east." J. Med. Entomology. 32(3). 381-383 (1995)
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[Publications] A.Tamura 他3名: "Classification of Rickettsia tsutsugamushi in a new genus,Orientia gen.nov.,as Orientia tsutsugamushi comb.nov." Intern. J. systm. Bacteriol.45(3). 589-591 (1995)
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[Publications] 浦上 弘、多村 憲: "恙虫病リケッチアOrientia tsutsugamushiと宿主ツツガムシとの共生関係について" 日本細菌学雑誌. 52(2). 497-511 (1996)
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[Publications] A.Tamura 他8名: "Demonstration of antigenic and genotypic variation in Orientia tsutsugamushi which were isolated in Japan,and their classification into type and subtype." Microbiol. Immunol.40(9). 627-638 (1996)
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[Publications] 多村 憲: "新流行感染症・再流行感染症 恙虫病とその病原体" 最新医学. 52(1). 46-53 (1997)
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[Publications] A.Tamura 他2名: "Tsutsugamushi Disease" University of Tokyo Press, 362 (1995)
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[Publications] A.Tamura 他: "Rickettsiae and Rickettsial Diseases" Veda Bratislava, 646 (1996)