1996 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス非構造蛋白質NS3の腫瘍形成能に関する分子細胞生物学的解析
Project/Area Number |
08670352
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
竹上 勉 金沢医科大学, 付置研究所, 助教授 (10113490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野島 孝之 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50142732)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / ウイルス蛋白NS3 / 形質転換 / 腫瘍形成能 / GST-NS3融合蛋白 / p53 |
Research Abstract |
本研究においては既に、HCVの非構造蛋白NS3のアミノ末端側を含むプラスミド(p5')を導入することにより、マウス細胞NIH3T3が形質転換を起こし、さらにヌードマウスへの接種で腫瘍が形成されることから、HCV-NS3に腫瘍形成能があることを示している。今年度の研究では以下の3項目について解析を行い、幾つかの知見を得た。(1)間接蛍光抗体法によって発現NS3の存在部位を解析した結果、発現NS3蛋白は細胞質とくに核周辺部に多いことが明らかになった。(2)マウス細胞の他にヒト肝細胞由来株KN73細胞にp5'を導入したところ、細胞増殖性の変化はみられず、対照細胞と比べ同様の増殖曲線であった。KN73細胞とNIH3T3細胞との差異については細胞の感受性が異なること、及びNS3遺伝子による細胞形質転換能は強いものでは無いことを示唆している。またHCV-NS3とp53とを同時発現させたNIH3T3細胞においては増殖性はp5'導入細胞に比べ低く、また腫瘍形成能についても抑制されていることが分かった。この事実から、NS3の形質転換活性に対してp53による抑制効果が示唆され、細胞内におけるp53とNS3蛋白との相互作用が推定された。しかしながら、(3)免疫沈降法による宿主細胞内NS3結合蛋白の検出、GST-NS3を用いた方法等の解析ではNS3とp53との直接的結合の事実は得られなかった。従って、別の宿主蛋白の介在がNS3とp53の作用の中にあるものと推察された。今後、NS3結合蛋白を各種細胞株から検出し、それらの形質転換における役割について解析をすすめる。
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[Publications] 竹上勉: "C型肝炎ウイルス非構造蛋白質NS3領域遺伝子の導入による細胞の形質転換" 金沢医大総医研年報. 7. 117-124 (1996)
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[Publications] 野島孝之: "分子生物学的解析により確診した滑膜肉腫の一例" 病院病理. 14(1). 48 (1996)
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[Publications] Kazuya,Annen: "Analysis of the hepatocyte growth factor receptor in regeneration and oncogenesis of the liver." Gen. Diagn. Pathol. 141. 171-186 (1995/1996)
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[Publications] 竹上勉: "フラビウイルスの遺伝子複製および細胞との相互作用" ウイルス. 46(2). 91-97 (1996)
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[Publications] 竹上勉: "肝炎・肝硬変・肝癌 分子メカニズムから病態診断治療まで(分担・C型肝炎ウイルスcarcinogenesis166-167)" 羊土社 小俣政男編, 193 (1996)