1997 Fiscal Year Annual Research Report
発展途上国集団における必須元素栄養と汚染元素曝露の相互関連に及ぼす近代化の影響
Project/Area Number |
08670386
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅崎 昌裕 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30292725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 港 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40251227)
本郷 哲郎 山梨県環境科学研究所, 主幹研究員 (90199563)
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Keywords | 発展途上国集団 / パプアニューギニア / 必須元素栄養 / 汚染元素曝露 / 近代化 / 生体試料 / 鉄 / 水銀 |
Research Abstract |
パプアニューギニアの複数の集団から収集した生体試料の元素分析を通じ、必須元素の栄養状態および汚染元素の曝露状態が、それぞれの集団の人類生態学的特性によって規定される食物摂取パターンの違いによりどのように変動しているかについて検討した。その際、特に、近代化の進行程度の違いによる影響に着目して解析を行った。必須元素に関しては、主に、鉄の栄養状態について貧血と関連させながら、伝統的な生業活動に依存している集団から近代化が進行している集団、さらに都市に居住する集団を対象に比較を行った。その結果、最も伝統的な生活様式を維持している集団では鉄欠乏者はみられなかった。近代化が進行している集団で鉄栄養状態の悪化がみられ、伝統的な食物から輸入食物への移行に伴い、鉄の摂取量が低下する可能性が示唆された。特に、地方の村落から都市部に移住し、定職をもたず他者の生計に依存する生活様式を長く続けている場合に顕著な鉄栄養状態の悪化が認められた。鉄欠乏は、多くの集団で貧血の主要な原因となっており、鉄欠乏者のみられなかった伝統的集団においては貧血者もみられなかった。一方、いくつかの集団では、鉄欠乏を伴わない貧血者がかなりの割合でみられ、マラリアへの感染率の高さが関連していることが示された。これらの結果は、鉄の栄養状態を貧血との関連で評価する場合、近代化の進行程度の違いや感染症への罹患率の違いといったそれぞれの集団のもつ生態学的条件を考慮に入れる必要の重要性を示している。一方、汚染元素への曝露状態についても、水銀の摂取量、生体試料中濃度を、伝統的な集団から近代化が進行している集団について比較検討した。その結果、近代化の進行程度にかかわらず、水銀の主な摂取源である魚の摂取量の違いが水銀への曝露量に大きく関連し、魚の摂取量が多い集団ではその生体試料中のレベルが先進諸国に匹敵する場合のあることが明らかとなった。
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[Publications] Hongo,T.: "Nutritional status of trace elements in traditional populations inhabiting tropical lowland,Papua New Guinea." Fischer,P.W.F.,L'Abbe,M.R.,Cockell,K.A.,ahd Gibson,R.S.(eds.)Trace Elements in Man and Animals-9,NRC Research Press,Ottawa. 120-122 (1997)