1996 Fiscal Year Annual Research Report
近代化と糖・脂質代謝異常に関する国際血清疫学的研究
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08670440
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 講師 (60176386)
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Keywords | 近代化 / 糖代謝異常 / 脂質代謝異常 / パプアニューギニア / 倹約遺伝子仮説 |
Research Abstract |
本研究の目的は、南太平洋の近代化と疾病構造の変化の説明によく引用されるニールの「倹約遺伝子仮説」、すなわち「飢餓状態に適応してきた人々は近年の食物豊富な環境下で過剰に適応し、肥満や糖尿病等を起こし易い」の妥当性を検証することにある。第2次大戦後から徐々に近代化してきたパプアニューギニア島嶼部、バロパ地域(4地域)成人住民とそれらから首都への移住者から得られた血液を材料とし、糖および脂質代謝項目(尿糖,T-cho,TG,HDL,LDH,Apo-A1,Apo-B,Apo-E)を分析して移住を含めた地域・性による差を明らかにする一方、それらと年齢・体格・血圧・他の血液性状等との関連性を検討した。 分析対象数はバロパ4地域合計750名(男:363名、女:387名)、首都移住者合計49名(男:25名、女:24名)であった。尿糖排泄者率は地域・性に関わらず2-3%で他の太平洋諸国における値より低いものの、これまでのパプアニューギニアにおける報告(首都成育者を除く)と大差なかった。脂質代謝項目のうちHDLの低下が男女の約60%に、またLDHの上昇が男女の約55%に見られたが、T-choやTGの上昇は男女のそれぞれ約10-15%に見られただけで、Apo-A1の低下やApo-BおよびApo-Eの上昇も男女の10%程度に見られただけであった。一方、T-cho,TG,LDH,Apo-Bは地域により異ならなかったが、HDL,Apo-A1.Apo-Eには男女ともで共通の有意な地域差が見られ、HDLとApo-A1は首都移住者で低く、Apo-Eは首都移住者で逆に高かった。 性別に各脂質代謝項目を従属変数とし、年齢・体格・血圧・他の血液性状を独立変数としたステップワイズの重回帰分析を行なったところ、両性の全脂質代謝項目で有意な重回帰式が得られた(重回帰係数の2乗-寄与率はいずれも32%以上)。現在、近代化と脂質代謝項目およびそれらと関連が見られた項目との因果関係についてさらに検討中であり、結果は国内外の学会で発表したり学術雑誌に投稿する他、南太平洋各国の地域保健政策に役立てるため、各国の保健省等を通じてフィードバックする予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Inaoka,et al.: "Emergence of Degeneratine Diseases in Papua New Guinea Islanders" Environmental Sciences. suppl.(in press). (1997)
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[Publications] T.Inaoka,et al.: "Nutritional Status and Blood Pressuve in Lou Islandes in Papua New Guinea" PNG Med.J.40(in press). (1997)