1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリ感染の家族集積性に関する血清疫学的研究
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08670449
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
渡辺 能行 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (00191809)
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Keywords | ヘリコバクタ・ピロリ感染 / 家族集積性 / 疫学 |
Research Abstract |
モデル地区において1995年の検診や1診療所での診療の残余血清を保存していた男性1,127人、女性1,469人、合計2,596人について、住所と姓により同一家族成員を同定した。その結果、251の夫婦、父親44人とその子供48人及び母親33人とその子供34人が判明した。 これらの集団の血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体(Ig-G抗体)が20units/ml以上を感染陽性と定義して各群の抗体陽性者数(陽性率)を検討したところ、以下のとおりであった。すなわち、夫では150人(59.8%)、妻では118人(47.1%)、父親では22人(8.8%)、その子供では2人(4.2%) 、母親では17人(51.5%)、その子供では3人(8.8%)であった。 251夫婦のうち、夫婦ともに血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったのは69夫婦、夫婦ともに血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陰性であったのは52夫婦、夫のみ血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったのは81夫婦、妻のみ血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったのは49夫婦であり、夫婦で一致していたのは121夫婦(全体の48.2%)であった。 夫が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったその妻における陽性者数(陽性率)は69人(46.0%)であったのに対して、夫が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陰性であったその妻における陽性者数(陽性率)は49人(48.5%)と有意な差がなかった。逆に、妻が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったその夫における陽性者数(陽性率)は71人(59.2%)であったのに対して、妻が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陰性であったその夫における陽性者数(陽性率)は81人(61.8%)と有意な差がなかった。 父親が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったその子供における陽性者数(陽性率)は1人(4.3%)であったのに対して、父親が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陰性であったその子供における陽性者数(陽性率)は1人(4.0%)と有意な差がなかった。 同様に、母親が血清ヘリコバクタ・ピロリ抗体陽性であったその子供における陽性者数(陽性率)は2人(11.1%)であったのに対して、母親が血清ヘルコバクタ・ピロリ抗体陰性であったその子供における陽性者数(陽性率)は1人(6.3%)と有意な差はなかった。 以上の各群における年齢分布の差はなかったので、ヘリコバクタ・ピロリ感染には家族集積性が認められないと考えられる。
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