1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08670463
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
鶴田 真 久留米大学, 医学部, 助手 (00248395)
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Keywords | 胸部解離性大動脈瘤 / 危険因子 / Case-Control Study |
Research Abstract |
解離性大動脈瘤は近年急速に増加し、その予後はきわめて不良である。しかし、本疾患の疫学的報告は少なく、高血圧以外の危険因子については未だ解明されておらず、動脈硬化との関連も不明である。 そこで、今回われわれは、1989年1月から1995年12月までに当大学救命救急センターに入院した胸部解離性大動脈瘤の全症例を検討し、発症時の採血データを調査し、その危険因子を検討した。また、発症後しばらくして(紹介医で加療後に)搬入された症例に関しては、紹介医での血液検査を調査した。対照には、当科が1989年に行った当大学近郊での一般住民検診受診者2167人の中から性・年齢・高血圧歴を頻度対応させ、発症者との比較を行った。 先天性疾患などの明らかな原因を持つ患者4名を除く124名について検討したところ、患者群vs対照群の平均血清コレステロール値(168.9±34.6vs197.5±39.8mg/dl)、総タンパク値(6.8±0.6vs7.4±0.5g/dl)、アルブミン値(3.7±0.6vs4.3±0.3g/dl)はいずれも有意(p<0.001)に患者群で低値であった。性・年齢・高血圧歴を考慮した多変量解析においても、これらの因子は有意に関連していた。また、発症は寒冷時および季節の変わり目に多く、安静時に比べ労作時に多いことも判った。従って、本疾患が欧米に比較し本邦に多いことから血管の脆弱性に高血圧や季節変化、労作などの急性および慢性的ストレスが加わり、発症する可能性を示唆した。即ち、わが国においては、本疾患と脳出血はほぼ共通の病因を有し、その危険因子は欧米とは異なり、わが国に特有の発症要因が存在するのではないかと考えられた。
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