1996 Fiscal Year Annual Research Report
中高年者における有害因子曝露による中枢神経高次機能への影響
Project/Area Number |
08670473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
平田 衛 大阪府立公衆衛生研究所, 労働衛生部, 主任研究員 (60167608)
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Keywords | 手腕振動曝露 / 鉛曝露 / 加齢 / 中枢神経高次機能 / 事象関連電位 |
Research Abstract |
振動、鉛曝露による中枢神経高次機能への影響を明らかにする目的で、事象関連電位を、振動病患者、鉛曝露労働者及び年齢をマッチした健常対照者について測定した。中枢神経機能に影響を及ぼす疾患、外傷、飲酒量、他の有害因子などへの曝露がない振動病患者32名(VS群、52歳〜65歳、59.7±3.82歳)、鉛曝露労働者14名(Pb群、48〜64歳、57.1±4.27歳)、および同じ基準で選んだ健常対照者20名(C群、48〜65歳、57.3±4.80歳)について、NOGOポテンシャルおよびP300の潜時を測定した。刺激パラダイムは、NOGOポテンシャルにおいてはコンピュータディスプレイ画面上に示される標的画像を見た際にボタンを押さない、P300においては同じく標的画像を見た際にボタンを押すことであった。VS群のNOGOポテンシャル潜時(141±23.9msec)およびPb群のそれ(150±9.24msec)は、C群のそれ(124±24.0msec)に比べて延長する傾向を示したが、有意ではなかった。しかし、VS群のP300潜時(481±64.5msec)およびPb群のそれ(475±46.0msec)は、C群のそれ(407±41.1msec)に比べて有意な延長を示した(各々p<0.01,p<0.05)。P300潜時の延長から、振動病患者及び鉛曝露労働者における認知及び記憶に関連した機能の低下が示唆された。振動病患者については1995年に報告した音刺激によるP300潜時の延長を裏付けるものと考えられた。鉛曝露による中枢神経高次機能の変化は発育期の小児においては明らかにされているが、鉛曝露労働者など成人においては、この結果により初めて明らかになった。鉛曝露によって小児における多動や成人における不眠など興奮性の影響が明らかにされていることから、運動制御の抑制と関わるNOGOポテンシャル潜時の延長が期待されたが、明らかにはならなかった。今後例数を増やして、検討を深める計画である。
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