1996 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインを介した小腸特異酵素の発現とその分子機構
Project/Area Number |
08670599
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
二川 健 徳島大学, 医学部, 助手 (20263824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
六反 一仁 徳島大学, 医学部, 助教授 (10230898)
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Keywords | レチノイン酸 / インターロイキン-1 / IEC-6細胞 / 肝 / 骨 / 腎型アルカリホスファターゼ / レチノイン酸レセプター / レチノイドXレセプター / レチノイドXレセプター応答領域 |
Research Abstract |
これまでの研究より、レチノイン酸はラット小腸上皮細胞(IEC-6細胞)株に作用して、その増殖を抑制するとともに、肝/骨/腎型アルカリホスファターゼ(L/B/K ALP)を誘導することを明らかにした。本研究では、これらのレチノイン酸の作用を炎症性サイトカインであるインターロイキン1β(IL-1β)が増強することを見いだし、さらにこのIL-Iβとレチノイン酸の相乗作用のメカニズムについて、L/B/K ALPの誘導を中心に検討した。 IL-1β単独ではIEC-6細胞の増殖や蛋白質発現に対しほとんど作用しないが、レチノイン酸とともに作用させるとIEC-6細胞の増殖を高度に抑制した。また、L/B/K ALPmRNAおよび蛋白質の発現を相乗的に増大させ、IEC-6細胞の蛋白質合成も約20%上昇させた。さらに、レチノイン酸とIL-1βの同時添加したIEC-6細胞は線維芽細胞様の突起をもつ細胞へ形態変化した。このようなIEC-6細胞に対するIL-1βとレチノイン酸の相乗効果のメカニズムを調べるため、レチノイン酸レセプター(RAR)およびレチノイドXレセプター(RXR)mRNAの経時的な変動をノザンブロット法により、L/B/K ALPの5′プロモーター領域に存在するレチノイドXレセプター応答領域(RXRE)に対する結合活性をゲルシフト法により検討した。無添加時のIEC-6細胞は、RARsとRXRsのすべてのレセプターを種々のレベルで構成的に発現しているが、RARs α,βとRXRs α,β mRNAの発現量はIL-1βとレチノイン酸の同時添加により著明に増加した。一方、RARγとRXRγmRNAの発現量は変化しなかった。さらにIL-1βはレチノイン酸により誘導されるRXRE結合活性を著しく増大させた。以上の結果から、IL-1βはレチノイン酸の細胞内シグナルを活性化することにより、L/B/K ALPなどの蛋白質の発現を亢進していることが示唆された。L/B/K ALPは胎生後期の小腸に一過性に発現することが報告されており、IL-1βとレチノイン酸のこのような相乗効果は小腸の発生に関与している可能性が考えられる。本研究は、小腸上皮細胞におけるサイトカインとレチノイン酸の相乗効果を明らかにした最初の報告であり、今後このような相乗作用が小腸上皮細胞の成長に具体的にどのような役割を果たしているのかをより詳細に検討してゆきたい。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Nikawa.T.et al.: "Retinoic acid induces liver-type alkaline phosphatase in rat intestinal crypt cells." Biochem.J.(in press).
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[Publications] Nikawa.T.et al.: "Soy protein suppresses exercise-induced activation of muscle calpain and reduces muscle damage." J.Nutr.(in press).
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[Publications] Hirakawa.T.et al.: "Geranylgeranylacetone induces heat shock proteins in cultured guinea pig gastric mucosal cells and rat gastric mucosa." Gastroenterology. 111. 345-357 (1996)
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[Publications] Teshima.S.et al.: "Induction of heat shock proteins and their possible roles in macrophages during activation by macrophage colony-stimulating factor." Biochem.J.314. 497-504 (1996)
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[Publications] Nikawa.T.et al.: "Efficacy of all-trans,β-carotene,canthaxanthin and all-trans,9-cis,4-oxe retinoic acid in inducing differentiation of F9 embryonic carcinoma cell line." Arch.Biochem.Biophys.316. 665-672 (1995)
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[Publications] Teshima.S.et al.: "Alteration of the respiratory burst and phagocytosis of macrophages under protein malnutrition." J.Nutr.Sci.Vitaminol.41. 127-137 (1995)
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[Publications] 二川 健: "医学のあゆみ 消化器疾患:分子生物学的アプローチ" 医歯薬出版株式会社, 180 (1996)
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[Publications] 二川 健: "医学のあゆみ 脂溶性ビタミンをめぐる新展開" 医歯薬出版株式会社, 49 (1996)