Research Abstract |
本研究では,消化管粘膜局所における補体活性化の制御機構として重要な膜結合型補体制御因子の意義を,ラット,ヒト,モルモット胃粘膜を用いて検討を進めている. ヒト胃粘膜ではdecay acceleratimg factor(DAF),membrene cofactor protein(MCP),homologous restriction factor 20(HRF20)を検討したが,特に,DAFの発現が炎症の程度と相関することを見いだした.また,Helicobacter pylori(Hp)感染者の胃液中の補体C3濃度および胃粘膜DAFの発現を除菌の前後で検討を進めているが,酸度の低い胃液ではHp感染者にC3濃度が高いこと,除菌が成功するとDAFの発現程度が減少することが判明しつつある.また,実験小動物において唯一,DAFを蛋白および遺伝子レベルで検討できるモルモットにおいて,実験的胃粘膜障害時のDAFの発現を蛋白および遺伝子レベルで検討した.左胃動脈と大網動脈を30分間クランプしたモデルで,虚血前,虚血後1,6,12,24時間,3,7日後に胃組織を採取し免疫組織化学染色を施行した.またNorthern blottingにてRNA量の変化を分析し,特殊なプローブを用いたRT-PCRで,最近同定された6つのisoformの発現変化を検討した.免疫組織化学では,虚血後24時間,3日に,胃粘膜上皮細胞に有意なDAFの発現を認めたが,7日後には虚血前のレベルに低下した.Northern blottingでは,虚血後6時間の胃粘膜でRNA量が明らかに増加し,isoformの検討では,膜貫通型の増加が見られた.さらに,ラット左胃動脈を30分クランプ解放するモデルでも,補体を枯渇するCVFの前処置や補体活性の阻害剤は,虚血後に起こる粘膜障害を抑制したが,胆汁酸による胃粘膜障害でもCVFの前処置で障害が抑制されることをみいだした.これらの成績から,種々の胃粘膜障害の病態に,補体-補体制御因子系の重要な役割を果たすと考えられる.
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