1998 Fiscal Year Annual Research Report
原発性胆汁性肝硬変における胆管破壊機序に関する研究-胆管系Cytokeratin subclassと細胞間接着分子の発現様式の解析を中心に-
Project/Area Number |
08670621
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
織田 正也 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船津 和夫 慶應義塾大学, 医学部, 兼任講師 (00129644)
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Keywords | 原発性胆汁性肝硬変(PBC) / 自己免疫性胆管炎(AIC) / 胆管破壊機構 / Cytokeratin亜分画 |
Research Abstract |
平成10年度はPBCの胆管破壊機構における抗原の解明を図るべく中間径フィラメントの構成成分であるCytokeratin亜分画(MW 52kD)の免疫組織化学的表出を主眼に検討した。近年、PBCの類縁疾患として、AMA(抗ミトコンドリア抗体)陰性ANA(抗核抗体)陽性血液生化学的並びに組織学的にPBCと同様の所見を示すautoimmune cholangitis(AIC)が注目されるようになってきた。AICはこれまでPBCの標的抗原であるとされていた抗ミトコンドリア抗体を持たないにもかかわらずPBCと同様の胆管破壊を示す。この疾患と比較することはPBCの病態、cytokeratin亜分画(MW52kD)の関与のの解明に非常に有用であり、これを優先して行なった。 【方法】腹腔鏡下楔状肝生検をし得たAMA陰性ハA陽性のAutoimmune cholngitis4 例、PBC(stageI-II)5例、対照として無黄疸胆石症5例からの肝組織を対象とした。一次抗体としてCK subclass(MW52kD)に対するmonoclonal AbおよびCK subclass M630(MW 66,57kD)を用いて免疫酵素抗体間接法により観察を行った。血清抗CK subclass(MW52kD)抗体価の測定にはELISA法を用いた。【成績】対照群の健常肝内胆管系の上皮細胞には表出されないCK subclass(MW52kD)が、PBC群のみならずAIC群の慢性非化膿性破壊性胆管炎の像を示す小葉間、隔壁胆管上皮細胞の形質膜ないしは細胞質内に表出された。これに対してCytokeratinの別の亜分画であるCK subclass M630は各群とも細胆管から隔壁胆管に至る胆管上皮細胞内に強い陽性反応を示し、疾患特異性および中等大胆管への特異性を認めなかった。血清CK subclass(MW52kD)抗体価はAIC,PBC両群において健常群に比べて有意の上昇を示した。【結論】AMA陰性M2陰性AICにおいてもPBCと同様に血清抗CK subclass(MW52D)抗体価の上昇を伴ってCK subclass(MW52kD)は胆管上皮細胞質に異所性表出を認めた。AICの胆管破壊機構においてもcykeratin subclass(MW 52kD)が重要な役割を持つ可能性が示された。このことはAMAの存在の有無にかかわらず胆管破壊にCK subclass(MW52kD)が関与することを示し、胆管破壊機構の解明に重要な示唆を与える.
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[Publications] 亀谷宜隆,他: "原発性胆汁性肝硬変の胆管破壊機構におけるcytokeratin subclassおよびICBM-1発現の関連" 消化器と免疫. 34. 200-203 (1997)
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[Publications] 織田正也,他: "原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎と黄疸" 日本内科学会雑誌. 86(4). 31-39 (1997)
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[Publications] 大上正裕,他: "自己免疫性肝疾患に対する腹腔鏡下楔状肝生検の有用性" 消化器内視鏡. 10. 119-206 (1998)
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[Publications] 織田正也: "原発性胆汁性肝硬変・原発性硬化性胆管炎の病態と治療〜最近の動向〜" 東京都医師会雑誌. 51(3). 393-408 (1998)
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[Publications] 織田正也,他: "細胞骨格.肝臓病学 Basic Science" 戸田剛太郎,織田正也,清澤正道,坪内博仁,中沼安二編,医学書院, 90〜114 (1998)
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[Publications] 織田正也,他: "胆内胆汁うっ滞の発生機構.肝臓病学、Basic Science" 戸田剛太郎,織田正也,清澤正道,坪内博仁,中沼安二編,医学書院, 603-621 (1998)