Research Abstract |
アルコール性肝障害における遺伝的背景について、サイトカイン遺伝子多型より検討した。対象は、大酒家110例(脂肪肝/非特異的変化18例と肝機能障害を伴わない大酒家17例を非線維化群35例、高度肝線維症21例と肝硬変46例を線維化群67例、アルコール性肝炎8例)及び健常者46例である。末血よりgenomic DNAを抽出し以下の方法でTNFα、TNFβ、IL-1β遺伝子多型を同定し本邦におけるアルコール性肝障害との関連性につき検討した。TNFα遺伝子多型はプロモーター領域の変異多型(site-308,-238:両方G→A)をPCR-RFLP(制限酵素NcoI,MspI)にて、TNFβ遺伝子多型はイントロン1の多型部位をPCR-RFLP(NcoI)で、IL-1β遺伝子多型は上流域-511部位およびエクソン5の変異多型をPCR-RFLP(AvaI,TaqI)にて各々遺伝子型を同定した。各病型とこれらの遺伝子型の頻度について比較検討した。(1)日本人の大酒家および健常者例ではTNFα遺伝子多型は全く認められず、欧米の既報告と比べ著しい人種差が認められた。(2)各病型におけるTNFβ遺伝子多型の頻度(+/+,+/-,-/-)は、非線維化群(11.4%,51.4%,37.2%)、線維化群(9.0,58.2,32.8)、アルコール性肝炎(25.0,62.5,12.5)、健常者(19.6,45.6,34.8)であり各病型との関連は認められなかった。(3)Exon5のIL-1β遺伝子多型については,(80.0,20.0,0.0),(97.0,3.0,0.0),(83.3,16.7,0.0),(91.3,8.7,0.0)と既報告と比べ著しい人種差を認め、また-511部位の多型については(37.1,51.4,11.5),(28.4,59.7,11.9),(25.0,50.0,25.0),(30.4,47.8,21.8)であり、いずれも病型間での関連は認められなかった。 以上の結果からこれらのサイトカインの遺伝子多型は、本邦におけるアルコール性肝障害の発症の遺伝的背景である可能性は低いと考えられた。
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