1996 Fiscal Year Annual Research Report
気管支肺アスペルギルス症の発症機序ならびに病原性因子の解明
Project/Area Number |
08670664
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
網谷 良一 京都大学, 胸部疾患研究所, 講師 (70167964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 尚子 京都大学, 胸部疾患研究所, 助手 (70182136)
久世 文幸 京都大学, 胸部疾患研究所, 教授 (10027104)
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Keywords | 気管支肺アスペルギルス症 / Aspergillus fumigatus / 発症機序 / 病原性因子 / 気管支粘膜 / Organ culture法 / alkaline protease / gliotoxin |
Research Abstract |
ヒト気管支粘膜"Organ culture"法やマウス慢性肺アスペルギルス症モデル等を用いて気管支肺アスペルギルス症の発症機序ならびに病原性因子に関する検討を行い、以下の成績を得た。 I.ヒト気管支粘膜"Organ Culture"法によるAspergillus fumigatusと気管支線毛上皮との相互作用の検討。 1)A.fumigatusの野生株は気管支粘膜の線毛ビ-ト数の抑制と著しい気道線毛上皮傷害を惹起した。走査電顕による観察では、A.fumigatusの菌糸増殖に伴い、線毛の著しい配列の乱れ、線毛上皮細胞のtight junctionの乖離、線毛細胞の剥離脱落、菌糸の上皮下への侵入像を認めた。 2)Alkaline protease単独欠損変異株の気道線毛ビ-ト数の抑制作用および気道線毛上皮傷害作用は上記の野生株に比べて有意に軽微であり、Alkaline proteaseが気道線毛上皮傷害作用の一翼を担っていることが示唆された。 3)A.fumigatus由来のマイコトキシン(glitoxin,fumagillin,helvcolic acid)は気道線毛ビ-ト数の抑制と線毛上皮傷害を呈した。特にgliotoxinは著明な線毛ビ-ト数抑制と上皮傷害を呈した。 以上の成績は欧州呼吸器学会(Stockholm,1996.9)及び米国胸部疾患学会(San Francisco,1997.5)で報告し、現在英文論文作成中である。 II.A.fumigatus変異株(単一因子欠損株)によるマウス慢性肺アスペルギルス症の病変の検討。A.fumigatus変異株(alkaline proteaseまたはrestrictocinの単一因子欠損株)とその野生株を、当教室で開発したマウス慢性肺アスペルギルス症モデルに使用し、惹起される病変の広がり、病変の性状、生存率の差異などを検討したが、変異株と野生株の間で有意の差が認められなかった。現在さらにalkaline proteaseとrestrictocinの両者欠損株を用いた検討を継続している。 III.A.fumigatus培養濾液中の高分子のヒト好中球機能抑制物質および気道線毛上皮傷害物質に関しては、想定される複数の物質(protease活性を有する物質と欠く物質)の分離同定を継続中である。
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