侵襲性肺アスペルギルス症の早期の分子生物学的迅速診断法に関する研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08670670
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: 大分医科大学
• Principal Investigator: 橋本 敦郎 大分医科大学, 医学部, 助手 (80274752)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 那須 勝 大分医科大学, 医学部, 教授 (70039874)
• Keywords: 侵襲性肺アスペルギルス症 / 分子生物学的診断法 / 日和見感染症 / PCR法 / Galactomannan抗原検出法

Research Abstract

我々は、日和見感染症として重要な疾患のひとつである侵襲性肺アスペルギルス症において、迅速で非侵襲的な診断法である血清を用いたnested PCR法を開発した。
1、nested PCR法
1)プライマー:Aspergillus fumigatusの18s ribosomal RNAのV7からV9領域における遺伝子配列において、アスペルギルス属に特異的な領域からnested PCRが可能な2組を設定した。
2)PCR条件:1st PCRでは、denature-94℃1分、annealing-50℃1分、extension-72℃3分を30cycle、さらに2nd PCRでは、annealingを65℃に変えて30cycleとした。
3)特異性:Candida属、Cryptococcus属、Trichosporon属およびPenicillium属を含む真菌14菌種、さらに一般細菌10菌種において本法は、Aspergillus属5菌種においてのみ陽性となった。
4)検出感度:A.fumigatus精製DNA量1pgまで検出可能であった。
2、血清からのDNA抽出法
Proteinase K処理のみを用いた酵素法によって血清からAspergillus属DNAを抽出した。
3、マウス侵襲性肺アスペルギルス症実験モデルにおける各種診断法との比較検討
マウスを用いた実験モデルでは、感染24時間後より本法は陽性となり、陽性率は71%であった。この結果に対して、Galactomannan抗原検出法の陽性率は43%、血液培養はすべて陰性であった。
4、患者血清における検討
病理組織学的に侵襲性肺アスペルギルス症と診断された20症例における保存血清を用いて本法の有用性を検討した。その結果は、本法の陽性率70%、Galactomannan抗原検出法陽性率60%、血液培養はすべて陽性であった。

Research Products

• [Publications] Y.Yamakami: "PCR Detection of DNA Specific for Aspergillus Species in Serum of Patients with Invasive Aspergillosis" Journal of Clinical Micribiology. Vol.34. 2464-2468 (1996)
• [Publications] 橋本敦郎: "診断一血清および遺伝子学的方法(特集、アスペルギルス感染症)" 化学療法の領域. Vol.13. 54-60 (1997)
• [Publications] 山上由理子: "侵襲性肺アスペルギルス症が強く疑われ、Nested PCR法で経過を観察し得た2症例の検討" 感染症学雑誌. Vol.70. 1284-1289 (1996)
• [Publications] 橋本敦郎: "PCR法が興味深い経過を示した非侵襲性肺アスペルギルス症2症例の検討" 感染症学雑誌. Vol.71(印刷中). (1997)
• [Publications] 橋本敦郎: "真菌症遺伝子診断/病原真菌ゲノム解析プロトコール" メジカルセンス(印刷中), (1997)