1996 Fiscal Year Annual Research Report
正常者および中枢性運動障害における脊髄反射回路の中枢性制御の解析
Project/Area Number |
08670701
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
進藤 政臣 信州大学, 医学部, 助教授 (90020924)
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Keywords | 痙縮 / Ib抑制 / 中枢制御 / 痙性歩行 / 随意収縮 |
Research Abstract |
正常者17名および痙縮患者17名を対象に,内側腓腹筋からヒラメ筋に対するIb抑制を検討した.痙縮患者については痙縮以外の要素を除外するため,筋力低下のない例のみを特に選び,また脳障害と脊髄障害による痙縮では機序が異なる可能性があるため,今年度は脊髄障害による痙縮に限って検索した.Ib抑制は安静時と前脛骨筋の持続的随意収縮時(最大収縮の1〜10%で数段階)とで行い,随意収縮による抑制量の変化をみた.痙縮患者における安静時のIb抑制量には正常者と差がなかった.拮抗筋の収縮によって,正常者では全例で抑制量が有意に増大したが,痙縮患者では抑制量の増大は正常者より有意に少なかった.臨床徴候別に検討すると,痙性歩行のない患者では拮抗筋収縮によって正常者と同程度に抑制量が増大したが,痙性歩行を示した患者ではIb抑制の増加はほとんどみられなかった.さらに痙縮患者においては,収縮によるIb抑制の増加量は5m往復歩行時間と負の相関を示し(p<0.05),歩行に要する時間が長いほど,すなわち歩行障害の程度が強いほどIb抑制の増加量は少なかった.臨床徴候と神経回路の活動が相関したのは初めての知見である.なお安静時のIb抑制量や収縮による抑制の増加量と,腱反射,クローヌスなど他の臨床徴候との相関はなかった.以上より,痙縮患者の随意収縮におけるIb抑制の調節障害は,痙性歩行などの随意運動障害に大きく関与していると考えられる.また痙縮の伸張反射亢進と運動障害の機序はそれぞれ異なる可能性が高いことが示された. なお大脳磁気刺激については,コンピュータでのコントロールをするためのプログラムを作成し,正常者においてコントロール実験を行った.患者での応用は次年度以降に予定している.
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