Research Abstract |
ヒトは外界からの情報のうち視覚刺激に依存して行動している部分が大きい。本研究では、1)図形刺激による事象関連電位(N200,P300),文字刺激による事象関連電位(N400)を測定し,正常人におけるトポグラフィー,潜時,振幅のデータを確立することから最初のステップとなる。2)視覚性記憶プロセス,視覚性空間認知,言語の情報処理の検討に有用な図形・文字刺激のパラダイムを作成することが次のステップとなる。3)更に臨床応用として,左半側空間失認患者において,図形刺激課題による事象関連電位を測定して,正常人や左同名半盲例のデータを比較することを考えている。4)もう一つの臨床応用として,パーキンソン病,進行性核上性麻痺,脊髄小脳変性症,アルツハイマー病,ピック病などの神経変性疾患で,視覚を介した認知機能の低下があるかどうかを検証する計画である。平成8年度の研究では1)図形のodd-ball,S_1-S_2課題を用いて正常人のN200,P300を測定し,正常人における16〜32chトポグラフィーを作成,P300発生源(ダイポール)が視床,辺縁系,などにあることを確認した。正常波形の潜時と年齢との関連性も検討し,正の相関を認めた。今後は正常対象例の数をふやし,より信頼度の高いダイポール、スタディーを次年度で行う予定である。海馬がP300の発生源の一つかどうかについては,意見が分かれているのが現状であるが,この問題についても,正常人のダイポール・スタディーから迫っていきたい。2)半側空間失認の検出に有効な図形パラダイムを考察中である。その場合,左右非対称な特徴をもつ図形を上下に2つ並べ,それらを同時に呈示,それらが同じか違うかを判定させるパラダイムを考案中である。3)上記のパラダイムを用いて,最初に正常人の波形を測定,次いで左半側空間失認例に応用していきたい。4)各種神経変性疾患でN200,P300を測定し,それらと運動系・認知系・自律神経系の機能障害との相関がどうなるのかを,次年度から行いたい。
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