1996 Fiscal Year Annual Research Report
運動野および補足感覚運動野での運動興奮・抑制の統合機構の研究-高頻度磁気刺激と電位依存性Naチャンネルによる解析-
Project/Area Number |
08670740
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
辻 貞俊 産業医科大学, 医学部, 講師 (30117171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由比 友顕 産業医科大学, 医学部, 専修医
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Keywords | 電位依存性Naチャネル / てんかん / 高頻度磁気刺激 / Naイオン流入 / 運動野興奮・抑制機序 / 慢性硬膜下電極 / 運動誘発電位 / 複雑部分発作 |
Research Abstract |
1.てんかん患者での大脳神経細胞異常興奮機序解明のために,難治性複雑部分発作患者の外科的切除した焦点部位(側頭葉,海馬)を用いて,電位依存性Naチャネルに高い親和性を持つSaxitoxinをリガンドとして結合実験およびScatchard解析を行い,てんかん焦点部位神経終末の電位依存性Naチャネルの薬理学的特性を研究した。結果は3症例(7部位)の平均チャネル数(最大結合量;B max)は3.4±1.4pmol/mg(正常脳5.9pmol/mg)と電位依存性Naチャネル蛋白量の減少が認められた。親和性(解離定数,Kd)に関しては,正常脳,てんかん焦点部位ともに3〜10nMで変化はみられなかった。以上よりてんかん焦点部位での電位依存性Naチャネルは質的には正常だが,量的には減少傾向であった。正常な神経細胞では電位依存性Naチャネルが細胞の興奮発生・伝搬に関与し,てんかん性放電は大脳神経細胞の過剰興奮であり,電位依存性Naチャネルの過剰発現が予測されたが,逆の結果となった。 2.ラット大脳へ高頻度連続磁気刺激(30Hz,2秒間,刺激強度600ボルト,刺激回数4,200〜10,020回)を行い,高頻度磁気刺激による大脳皮質の興奮性の変化をVeratridine-induced ^<22>Na influxにより研究した。大脳刺激ラットと対象ラットでのNaイオン流入は両者ともに2〜4nmol/mg proteinの範囲であり有意差をみとめず,高頻度磁気刺激による大脳皮質の興奮性の変化は得られなかった。 3.てんかん外科症例の慢性硬膜下電極挿入患者の硬膜下電極を電気刺激して,運動誘発電位(MEP)とinhibitory period(IP)により運動野の興奮・抑制機序を研究した。運動野刺激でのみMEP,IP(100 msec 持続)が記録され,補足感覚運動野,感覚野,陰性運動野の刺激では出現しなかった。この結果は運動野の興奮と抑制機序がMEPやIPの出現に関与していることを示唆する。
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