超音波ドプラー法を用いた動脈硬化局所病変の高精度計測と集団検診への応用

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 08670749
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 小岩 喜郎 東北大学, 医学部, 助教授 (80091685)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 金井 浩 東北大学, 工学部, 助教授 (10185895)
• Keywords: 動脈硬化 / 粥腫 / 超音波ドプラ / 局所血管病変 / 微小振動計測 / 集団検診 / 粥腫安定性 / 危険因子

Research Abstract

本研究の本年度は、超音波ドプラ生体微小振動計測法にもとづいた、動脈硬化病変測定法を開発し、これを集団検診でも使用しうるように処理系統の改善を更に進めた。現在では、動脈硬化計測を、ほぼ実時間(10分未満)で完了しうるようになっている。
さらに各動脈硬化危険因子と血管壁変化の関係を検討するため、多人数(約1万5千人)の集団検診データの取り込み解析システムを完成したが、本年度はそのうちの動脈硬化危険因子の高度なもの90名について計測を行って、
1。頚動脈局所の壁の厚さ、弾性率を計測し、本法が他の方法では到達不可能である数十ミクロンの壁内各層別の変化まで計測しうる高精度の非観血的計測法であること、
2。動脈硬化の最も早期の変化はこれまで述べられて来たような壁厚の増大ではなく、壁弾性率の増大が先行すること、
3。進行病変については主病変たるアテロームの線維性被膜や粥腫内部の弾性的性質やその厚さなどをも明らかにしうること、
4。粥腫内部の物性変化は数週という短時間で大きく動的に変化していること
等の多くの重要な知見を得ることができた。
本研究によって、これまで強く望まれてきた動脈硬化、殊に血管局所病変たるアテロームの安定/不安定性や、その進展や退縮などを、非観血的にしかも血管壁粥腫の内部組成にまで踏み込んで把握する方法の端緒が開かれたものといえよう。また、健康診断にこれを応用し、上述の如く充分な成果を挙げることができたことから、今後もこの検診を含めた臨床的検討を継続し、危険因子の是正に伴う動脈硬化病変の改善の有無や治療を開始すべき時期に関する成績を検討することが必要である。

Research Products

• [Publications] Hasegawa H, Kanai H, Chubachi N, Koiwa Y.: "Non-invasive evaluation of Poisson's ratio of arterial wall using ultrasound." Electronics Letters. 33. 340-342 (1997)
• [Publications] Hasegawa H, Kanai H, Hoshimiya N, Chubachi N.Koiwa Y.: "Noninvasive evaluation of local elastic property of arterial wall using ultrasound." Proc of World Congress on Ultrasound.2CP23. 386-387 (1997)
• [Publications] Kanai H, Sato M, Chubachi N, Koiwa Y, Tanaka M.: "Noninvasive evaluation of local myocardial thickness in heart wall and its color coding." IEEE transact on UFFC.44. 752-768 (1997)
• [Publications] 小岩喜郎、本田英行、白土邦男、長谷川英之、金井浩、中鉢憲賢: "新しい高精度ドプラ法による動脈粥状硬化病変の定量計測" 第36回通研シンポジウム論文集. 36. 188-195 (1997)
• [Publications] 長谷川英之、金井浩、中鉢憲賢、小岩喜郎: "動脈壁の微小振動の非侵襲的高精度計測による局所弾性特性の評価" 日本音響学会誌. 53. 346-351 (1997)
• [Publications] 長谷川英之、金井浩、中鉢憲賢、小岩喜郎: "動脈壁厚変化の非侵襲的高精度計測による動脈壁弾性率の評価" J Med Ultrasonics. 24. 851-860 (1997)