1996 Fiscal Year Annual Research Report
NO合成酵素遺伝子のヒト血管内皮細胞における発現とその調節メカニズムの解析
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08670798
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
宮原 馨 高知医科大学, 医学部, 助手 (30229877)
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Keywords | NOS遺伝子 / 血管内皮 / プロモーター活性 / 転写因子 |
Research Abstract |
NOを合成する酵素であるNO合成酵素(NOS)の遺伝子のうち、ecNOSとiNOSの2つの遺伝子が、内皮細胞において、発現することを明らかにしている。今回、これら2つのNOS遺伝子のプロモーター領域の転写活性を解析した。 ヒトecNOS遺伝子は、ヒト臍帯静脈由来の血管内皮細胞(HUE-2)においては-116までの上流領域にあるSp1結合配列がプロモーター活性に必須である。ゲルシフトアッセイにより、DNA断片(-116to-99)とDNA断片(-88to+8)はそれぞれ配列特異的に核タンパクと結合することが判った。この上流領域に点突然変異を導入し、核タンパクと結合能を失わせたDNAは、プロモーター活性が上昇することが判った。DNase Iフットプリントで解析して判ったプロテクトされる配列は、従来は発表されているコンセンサス配列にはない新しいものである。ヒトecNOS遺伝子は、主に血管内皮細胞で発現されており、シェアストレスを含めいくつかの誘導する物質が報告されている。今回我々が明らかにした上流領域の配列がどのようにして、核タンパクと結合し、転写調節を行っているのかが次の問題である。現在、これらの核タンパクをコードする遺伝子をクローンする事を手がけている。 ヒト内皮細胞をサイトカインで処理した場合、内皮型ecNOS遺伝子は誘導がかからず、誘導型iNOS遺伝子は誘導され転写活性が上昇する。ヒトiNOS遺伝子は、内皮細胞HUE-2をサイトカイン等により刺激しCATアッセイで解析した結果、-406までの上流領域でプロモーター活性は上昇しうることが解った。さらに、この上昇は、IL-1β,IFN-γ,LPSの組合せによる転写活性の上昇と相同していることから上流領域-406までに十分にサイトカインに応答しうる配列があることが判った。サイトカイン等で処理したHUE-2細胞からの核抽出物でゲルシフトアッセイにより解析をした結果、NF-κB配列(-115to-106)を含む断片が、サイトカインに応答して核タンパクと結合することが判った。けれども、この配列に変異をおこしても、尚、プロモーター活性は、サイトカインにより上昇することから、他の配列も関与していると考えている。しかし、10Kb以上の上流領域が必要であるとの報告もなされている。ヒトとマウスでは、iNOS遺伝子の調節はかなり違っていることが示唆されていて、また、細胞種によっても異なるようである。 内皮細胞は、アセチルコリンなどで細胞内カルシュウム濃度が上昇し、内皮型NOSによりNOを産生する一方、炎症時においても、誘導発現されたNOSが持続的にNO産生すると考えられ、内皮細胞自体もなんらかの作用を行っていることが示唆される。また、内皮細胞が種々の刺激で、NO産生誘導がかかることが報告されているが、このNO産生は、誘導型NOSによって合成されたものかもしれない。今後、このような観点から、ecNOSとiNOS遺伝子の発現調節を調べていきたい。
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Research Products
(1 results)