1997 Fiscal Year Annual Research Report
再生血管内皮細胞における一酸化窒素合成酵素系の分子機構と活性酵素の役割
Project/Area Number |
08670802
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大原 郁一 九州大学, 医学部, 助手 (90185364)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 宏明 九州大学, 医学部, 助教授 (00235681)
江頭 健輔 九州大学, 医学部, 講師 (60260379)
|
Keywords | ルシゲニン / セロトニン / 内皮依存性血管弛緩反応 / 内皮由来一酸化窒素 |
Research Abstract |
幼若家畜豚冠動脈を、X線透視下にフォガティーカテーテルを用いて内膜剥離することにより、再生内皮冠動脈モデル動物を作成した(n=8)。1および2週間後、冠動脈造影により内膜剥離部位のセロトニン注入に対する過収縮反応を確認した。モデル動物を屠殺後、内膜剥離部位とコントロール部の冠動脈を採取し、収縮張力の実験で、内膜剥離部のセロトニンに対する過剰収縮反応と、内皮依存性血管弛緩反応(EDR)の低下を確認した。さらに内膜剥離部とコントロール部の冠動脈を切離し外膜を剥離した後、輪状標本として、ルシゲニンを含んだバッファ液中でインキュベートしShimazu社製ルミノメーターによって検出される化学発光量から、血管壁が産生する活性酵素(O_2)量を定量した。その結果、内膜剥離部のO_2産生量は、コントロール部に比し2〜3倍に増加していた(n=8)。O_2の産生部位を明らかにするために、綿棒で再生内皮細胞を擦過剥離したところ、O_2産生量がコントロール部と同等になり、内膜剥離部の冠動脈では再生内皮からのO_2の過剰生成の結果、内皮由来の一酸化窒素(NO)が失活され、EDRが低下している可能性が示唆された。再生内皮からのO_2の過剰生成の機序を明らかにするために、内膜剥離部の冠動脈の一部を凍結固定後、薄切して組織標本を作製し、血管壁におけるNO合成酵素(NOS)、superoxide dismutase(SOD)、xanthine dehydrogenase(XDH)に対する単クローン抗体を用いて免疫組織学的な検索を行った。内膜剥離部では、コントロール部に比し、NOS蛋白量の減少が認められたが、SODやXDHの蛋白量については明らかな差異が認められなかった。 以上より、内膜剥離後に再生した内皮により被覆された血管のセロトニンに対する過収縮反応の機序として、再生内皮細胞のNO合成酵素発現の減少と血管壁からのO_2の産生亢進とが考えられた。
|