1996 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜機能とCa^<2+>代謝機構の異常からみた高血圧の病態生理に関する研究
Project/Area Number |
08670819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
津田 和志 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90217315)
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Keywords | 高血圧 / 細胞膜機能 / Ca^<2+>代謝 / 神経伝達物質遊離 / protein kinase C / 電子スピン共鳴 / 細胞膜流動性 / insulin |
Research Abstract |
神経伝達物質遊離には細胞内へのCa^<2+>流入が必須であるが、Ca^<2+>は細胞内情報伝達系としてprotein kinase C(PKC)を活性化してその生理作用を発現すると考えられている。本研究ではまず、Ca^<2+>を介する情報伝達系と神経活性との関連、さらにそれらの高血圧における意義について検討するため、中枢内acetylcholine (ACh)ならびにnorepinephrine (NE) releaseに及ぼすPKCのspecific inhibitorであるH-7の影響を観察した。PKC inhibitor H-7は濃度依存性に線条体内ACh releaseを抑制した。H-7は高血圧自然発症ラット(SHR)においてもACh releaseを抑制したが、その作用は対照Wistar-Kyotoラット(WKY)に比し有意に大であった。一方、延髄内NE releaseもH-7存在下で減少したが、その抑制程度はSHRでWKYラットに比べ有意に強かった。以上の成績より、PKCは中枢内AChならびにNE release調節に重要な役割を果たすものと考えられる。中枢内神経活性調節におけるPKCの意義については尚不明な点が多いが、SHRでH-7の作用が大であることは高血圧でのCa^<2+>-PKC系の亢進を示唆するものと考えられる。 次に、細胞膜の物理的性質の検討として電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用いて本態性高血圧から得られた赤血球の細胞膜fluidityを測定した。赤血球膜fluidityは高血圧群で正常血圧群に比し有意に低下していた。最近、insulin抵抗性が高血圧の成因に関与すると提唱されているが、本研究においても血漿insulin濃度は高血圧群で高値を示した。さらに、血漿insulin濃度が高いほど膜fluidityは低下しており、高insulin血症が高血圧の膜fluidity低下に一部寄与するものと考えられた。また、in vitroの成績でinsulinはCa^<2+>存在下で細胞膜fluidityを強く減少させることから、insulinによる細胞膜機能調節はCa^<2+>動態に関連したものである可能性が示唆された。 この様に、Ca^<2+>に対する感受性や内因性因子によるCa^<2+>動態の変化が神経活性や膜機能の変動を引き起こし、高血圧の成因、維持機構に一部関与するものと考えられる。
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[Publications] Tsuda K et al.: "Glutamatergic regulation of [^3H] acetylcholine release in striatal slices of normotensive and spontaneously hypertensive rats" Neurochemistry International. 29. 231-238 (1996)
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[Publications] Tsuda K et al.: "Modulation of [^3H] dopamine release by neuropeptide Y in rat striatal slices" European Journal of Pharmacology. (in press). (1997)
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[Publications] 津田和志 他: "中枢内Dopamine Releaseに及ぼすNeuropeptide YならびにDiltiazemの影響について" 臨床薬理. 27. 99-100 (1996)
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[Publications] 津田和志 他: "Neuropeptide Y(NPY)による中枢神経内交感神経活性調節機序とsodium ionの影響について" 心臓. 28(suppl 4). 76-79 (1996)