1997 Fiscal Year Annual Research Report
ラットの成長における性ホルモンの直接作用に関する研究
Project/Area Number |
08670851
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 英伸 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (60233409)
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Keywords | GHDラット / 成長 / IGF-1 / estradiol / testosterone / 思春期 / GH結合能 |
Research Abstract |
実験には遺伝的異常が証明されている完全型単独成長ホルモン(GH)欠損ラットモデルであるSpontaneous Dwarf rat(SDR)を用いた。前年度と同様のプロトコールで、出生直後よりの下垂体一性腺系抑制による成長および血中Insulin-like growth factor-1(IGF-1)濃度おについて検討した。10-15週齢のSDRを交配し、新生仔ラット(生後48時間以内)に対してGonadotropin releasing hormone(GnRH)アナログ(GnRHa:Leuprolide acetate depot)の皮下注射(2mg/kg/dose)を開始した。LHRHaは3週ごとに投与した。毎週体重測定を行い、15週令に殺処分し肝臓、精巣を摘出した。対照群として生理食塩水投与群を設定し、効果を比較した。 (結果)いずれも15週齢でのデータを示す。雄では精巣重量(対照vs GnRH;0.07 ±0.060 vs 0.46±0.03g)、および血中Testosterone濃度(154.1±83.5 vs 48.9±23.1ng/dl)がGnRHa群で対照群に比して有意に低値であった。雌ではGnRHa群で肉眼的に明らかに子宮、卵巣の発育が不良であり、血中Estradiol濃度の有意な低下(14.0 ±5.9vs5.2±0.5pg/ml)が認められた。以上よりGnRHaの上記条件での投与は両性において明らかに性腺機能を抑制した。また、両性において両群間に有意な体重差がみられなかった(雄:88±15vs91±12g、雌:79±15vs79±16g)。さらに、血中IGF-1濃度も両性において二群間で有意差は認めなかった(雄:11.5±1.3vs10.3±1.0,雌:11.0±1.8vs11.6±3.1ng/ml)。 (考察)前年度は同様の実験を正常ラットであるSprague-Dawley(SD)ラットで行い、GnRHaによる性腺機能抑制は、雄では体重増加、血中IGF-1濃度、肝GH結合能のいずれにおいても有意な変化をきたさず、一方雌に対しては体重を増加させたが、血中IGF-1は変化なく、肝GH結合能を低下させた。今年度の結果をSDラットと比較した場合、GHDラットにおいてはSDラットの雌において認められた体重変化を認めず、したがってこの変化はGH分泌動態を介した変化であると考えられた。これまで、雌の性腺機能抑制による体重増加がGHを介しているか否かは議論のあるところであったが、今回の結果はGHを介していることを支持するものである。また、両性において性腺抑制による血中IGF-1の変化はみられなかった。これまでの報告では雌では増加、雄では増加または変化なし、とされており、一定しない。今回の我々の結果は両性において、また正常およびGHDラットにおいて変化はみられなかった。しかしながら、正常ラットでは肝GH結合能が雌ではGnRHaによって有意に低下しており、現在GHDラットにおいて検討中である。
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