1996 Fiscal Year Annual Research Report
新生仔低酸素性虚血性脳障害における神経栄養因子の動態と治療に関する実験的研究
Project/Area Number |
08670879
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
大野 雅樹 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (50194254)
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Keywords | 新生仔 / 低酸素性虚血性脳障害 / TrkB / BDNF / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
近年、低酸素性虚血性障害(hypoxic-ischemic injury,HII)を蒙った神経細胞の防御過程あるいは再生過程に、各種の神経栄養因子が関与しているとされてきた。それらの神経栄養因子のうち、脳由来神経成長因子(BDNF)は中枢神経系に広範囲に分布しており、各種の神経細胞に発現が見とめられ、神経細胞の防御機転あるいは再生機転に重要な役割をになっていると考えられる。今年度は、BDNFの特異的な受容体であるTrkBの発現の正常ラット脳における発達を観察するとともに、HIIを負荷したラット脳について免疫組織学的に検索した。 SD系ラットの胎生18日目および生後0、1、2、4、7、10、14、30日目の脳を4%パラホルムアルデヒド液で固定し、凍結切片を作製した。各切片は1次抗体として、抗TrkB polyclonal抗体(Transduction Lab.,)を用い、ABC法にて免疫染色を行った。また、生後7日目に左頸動脈を絹糸で結紮し、8%酸素、92%窒素の混合ガスを満たしたチャンバー内に仔ラットを2時間留置することにより、HII負荷を行った。これらの仔ラットの脳に関しても、同様の方法で負荷後0、3、24、48時間後、および負荷後5日目に免疫染色を行った。 その結果、TrkB受容体は胎生18日目の脳の広範囲に、弱いながらもすでに発現が認められた。生後のラット脳にも瀰漫性にTrkBを発現している細胞が認められ、形態学的に神経細胞と考えられた。免疫染色の強度は生後2日目頃にピークを示し以後漸減していった。一方、HII負荷後3時間目より両側大脳において免疫反応の増強がみられ、24〜48時間目頃が発現が最も亢進している。結紮側では梗塞巣と思われる部分の免疫反応が負荷後早期より低下ないし消失しており、その周囲の神経細胞における発現が特に著しく亢進していた。 これらのことより、TrkBを発現している神経細胞は、BDNFあるいはその他の神経栄養因子の作用を受け、HIIに対する防御能を発揮している可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 大野雅樹: "前頭部の局所性異常に起因すると考えられた点頭てんかんの1例" 小児科臨床. 49・11. 2417-2420 (1996)
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[Publications] 大野雅樹: "脳形成障害" 小児内科. 28. 630-634 (1996)
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[Publications] 大野雅樹: "中枢神経奇形" 周産期医学. 26. 536-538 (1996)
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[Publications] 大野雅樹: "脳炎・脳症の発症病理と病態" 小児内科. 28・7. 879-883 (1996)
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[Publications] 大野雅樹: "低酸素性虚血性脳障害の病理と可塑性" 脳と発達. 28・2. 28-34 (1996)