1996 Fiscal Year Annual Research Report
先天性腎および疾患におけるPAX2遺伝子異常の分子遺伝学的検討
Project/Area Number |
08670888
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
楢原 幸二 岡山大学, 医学部, 助教授 (80144765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 めぐみ 岡山大学, 医学部・附属病院, 医員
寺岡 通雄 岡山大学, 医学部・附属病院, 医員
鎌田 政博 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (30233927)
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Keywords | 先天性腎奇形 / 先天性心奇形 / 染色体相互転座 / PAX2遺伝子 / 視神経コロボ-マ / 慢性腎炎 |
Research Abstract |
PAX2遺伝子は発生を調節する転写制御因子で、胎生期の腎臓、中枢神経系、眼球に発現する。PAX2遺伝子の先天性腎奇形および心奇形における成因的意義を明らかにする目的で、本年度は、染色体の相互転座t(10;13)を有する視神経コロボ-マ・腎疾患症候群症例で、PAX2遺伝子の再編成を分子遺伝学的に検討した。 症例は、出生後まもなく視神経コロボ-マを指摘されていた5歳の男児で、蛋白尿と軽度の腎機能障害が認められた。エコー検査では腎臓の形態異常はなく、尿管膀胱逆流現象も認められなかった。腎生検検査で尿細管の萎縮、間質の線維化および糸球体硬化症が認められた。染色体核型は46,XY,t(10;13)(q24.3;q12.3)であった。 PAX2遺伝子の4-12エクソンを含むYAC、3'側のcDNAおよび5'側のcDNAをプローブとしてFISH法により解析したところ、10番染色体の切断点はPAX2遺伝子の中にあることが明らかにされた。cDNAをプローブとしたゲノムDNAのサザンブロット解析では、EcoRI、BamHI、KpnIいずれのDigestsも明かなバンドシフトや欠失が認められず、染色体相互転座によりDNAの大きな欠失は生じてないと考えられた。 本症例では染色体相互転座切断点がPAX2遺伝子の第3あるいは4イントロンに起こり、PAX2遺伝子の破壊が生じて、視神経コロボ-マ・腎疾患症候群となったと結論される。本症例は染色体異常を伴った視神経コロボ-マ・腎疾患の初例であるが、本症候群の原因がPAX2遺伝子異常であることが確認された。PAX2遺伝子異常は腎の発生異常のみならず原因不明の慢性腎炎の原因にもなりうるので、腎疾患で広く検討することが重要であると考えられた。
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