1997 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞に対するアセチルサリチル酸の作用-ライ症候群発生に関する基礎的研究-
Project/Area Number |
08670898
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Research Institution | Kochi medical school |
Principal Investigator |
倉繁 隆信 高知医科大学, 医学部, 教授 (50117032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友田 隆士 高知医科大学, 医学部・附属病院, 講師 (20207632)
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Keywords | アセチルサリチル酸 / 肝障害 / HepG2細胞 / 活性酸素 / Mn-SOD |
Research Abstract |
我々は、過去アセチルサリチル酸(以下ASA)の肝細胞に対する影響について検討してきた。今回は、ラットに経口的に、通常使用量(50〜150mg/kg/day)のASAを1週間投与し、種々の変化を正常ラットと比較検討した。肝機能のマーカーや、電子顕微鏡による組織像に変化は認めなかった。単離したミトコンドリアの形態にも変化はなかったが、ミトコンドリア呼吸は濃度依存性に障害を受けた。この時、電顕的検討で、毛細胆管内に層状構造物が50mg/kg/day1週間投与群から認められた。この変化は、ASAによる肝障害のごく初期にミトコンドリアの呼吸障害とともに認められる変化と考えられた。次に、ASAによる肝障害のメカニズムを解明するため、培養肝細胞のcell lineであるHepG2にASAを添加して検討した。ASAによる肝障害の最も早期の変化は、ミトコンドリア呼吸の障害で、その時、free radicalが発生することが知られている。一方、細胞にはradicalの消去酵素であるSODが存在し、特に活性酸素が発生しやすいミトコンドリアには、Mn-SODが存在することが知られている。そこで我々はASAの作用による活性酸素の発生およびSODの誘導と、肝細胞障害について検討を行った。 培養液中のASA濃度に相関して、肝の逸脱酵素の値は上昇し、形態学的にも組織障害像が顕著にみられた。又、逆にHepG2細胞が産生するアルファフェトプロテイン(AFP)は減少し、増殖速度もそれに比例して減衰した。この過程で、細胞内の活性酸素の発生はASAを加えない細胞と比べて増大することが判明した。この時に細胞質に存在するといわれるCu,Zn-SODはASA濃度に関係なく一定であったが、ミトコンドリアに局在するMn-SODは、ASA濃度に比例して誘導され、細胞障害が高度になると、誘導されなくなった。以上のことから、ASAの肺細胞障害には活性酸素が関与し、Mn-SODはその障害を防ぐように働いていることが示唆された。
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