1996 Fiscal Year Annual Research Report
SCID-CTCLマウス継代モデルの作製とその細胞生物学的解析
Project/Area Number |
08670963
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 貞夫 京都大学, 医学研究科, 教授 (30026869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 俊宏 京都大学, 医学研究科, 講師 (50188314)
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Keywords | CTCL / SCIDマウス / 生体内増殖 |
Research Abstract |
皮膚T細胞腫(CTCL)は、T細胞性リンパ腫瘍でありながら皮膚への特異的親和性を示す特徴的な疾患群であり、皮膚科領域における臨床的重要性は極めて高い。我々は重症複合型免疫不全マウス(SCIDマウス)へ患者由来腫瘍細胞を移植することを試み、既に3症例で移植の成立と腫瘍細胞の生体内増殖を観察し、免疫組織学的検索、フローサイトメトリー法による表面形質の検索、T細胞受容体遺伝子をプローブとしたサザンブロット法などによって患者腫瘍細胞との同一性を確認した。腫瘍細胞のマウスへの浸潤臓器は、肺、肝、脾、リンパ節、皮膚など多岐にわたった。外国における類似の試行と比較すると、実際にマウス皮膚に腫瘍細胞の浸潤を認めたのは今回の我々の観察が初めてである。しかも病理学的には、表皮内浸潤形態はCTCLに特徴的であるポートリエ微小膿瘍に極めて近似し、ヒトCTCLの細胞学的特性が種を越えて保持されていることが示された。以上の結果は、我々のモデルの良好な疾患再現性を示唆しており、悪性細胞の皮膚親和性と増殖機構の解析には非常に有用であると考えられた。今後の解析によって腫瘍の微小環境の解析も含めたCTCL細胞の生体内増殖機構を明らかにしていく。同時に、抗腫瘍剤や遺伝子治療の検定を目的として治療実験を開始する予定である。加えて、CTCL患者腫瘍細胞との同一性を確認されている培養細胞株が存在しない以上、我々の開発したSCID-CTCLマウスモデルは現在のところ唯一の生細胞実験系であるといえる。すなわち本モデルは、増殖機構の解析から治療法の開発に至る幅広い成果を期待できる点で極めて斬新であり、本症の解析に貢献する可能性は計り知れないものである。
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[Publications] 今村貞夫: "新しい疾患、診断そして治療" 京都皮膚科医会会報. 21. 16-17 (1996)
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[Publications] 松吉徳久: "癌転移と接着分子" 臨床皮膚科. 50. 49-53 (1996)
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[Publications] 川端栄美: "多彩な皮疹を呈し、ヨード造影剤で増悪しさらに半年後高悪性度リンパ腫に転化したAILD-like T-cell Lymphomaの一例" 皮膚のリンフォーマ. XV. 100-104 (1996)
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[Publications] 金澤伸雄: "20年の経過の末、肝臓への瀰慢性浸潤から急速に肝不全が進行し死亡に至った菌状息肉症の1例" Skin Cancer. 11. 172-178 (1996)