1997 Fiscal Year Annual Research Report
児童・青年期症例に対する非言語的治療法の治療機序に関する研究-「相互法」の臨床的研究を通して
Project/Area Number |
08671068
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
傳田 健三 北海道大学, 医学部, 講師 (10227548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 理子 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (90281823)
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Keywords | 児童期 / 青年期 / 非言語的治療 / 精神療法 / スクィグル法 / 相互法 / 芸術療法 |
Research Abstract |
1.対象と方法:平成9年4月から平成10年3月まで間に当科を受診し、非言語的治療の「相互法」を行った症例とその方法は以下の通りである。(1)Anorexia Nervosa:11歳、女性、小5(スクィグル法+相互物語構成法)、(2)Anorexia Nervosa,強迫性障害:11歳、女性、小5(相互なぐり描き法)、(3)Bulimia Nervosa,疼痛性障害:16歳、女性(スクィグル法)、(4)強迫性障害:14歳、女性、中2(相互なぐり描き法)。 2.治療経過:4症例の治療経過は以下の通りである。(1)転居を契機にダイエットを開始し、著名な痩せをきたした。スクィグル法を行うにつれ、患者は自ら描いた絵をもとに物語を作るようになった。物語になぞらえて自らの家族関係の問題点を整理していると考えられた。(2)学校におけるストレスを契機に食欲が低下し、著名な痩せをきたし、強迫性障害も合併した。相互なぐり描き法には当初種々の動物が描かれ、中盤には人間の多様な動き、ユーモア溢れる行動などが表現され、様々な感情の認識、分離、表出の作業が行われたと考えられた。(3)Anorexia NervosaからBulimia Nervosaへ移行し、疼痛性障害が合併した症例。スクィグル法には母親への両価的感情、父親への敵意と恐怖、弟への嫉妬心などが表現され、患者も次第にそのような問題に気づいていった。(4)強迫観念が次第に増強し、母親を巻き込み、家庭内暴力が合併した症例。相互なぐり描き法には当初攻撃性が表現されたが、それが次第に家族関係の表現、さらには積極的で活動的な内容に変化していった。 3.治療的意義:(1)家族関係の問題を物語として表現するという浄化作用、(2)自己の感情の認識、分離、表出の作業、(3)自己の感情に対する穏やかな気づき、(4)攻撃性を積極性、主体性に昇華する意義。
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[Publications] 傳田 健三: "Anorexia nervosa重症例に関する臨床的研究-IVH施工例について-" 精神神経学雑誌. 99・4. 198-214 (1997)
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[Publications] 傳田 健三: "神経症の成因と治療-薬物療法の視点から-" こころの科学. 76. 79-84 (1997)
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[Publications] 傳田 健三: "強迫性障害-薬物療法" 臨床精神医学講座. 5. 381-394 (1997)
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[Publications] 傳田 健三: "大うつ病" 精神科ケースライブラリー. 2. 38-52 (1998)