1996 Fiscal Year Annual Research Report
分裂病動物モデルにおけるNMDA,GABA受容体の生化学的,分子生物学的研究
Project/Area Number |
08671072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 利人 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (10196850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 孝文 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40241822)
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Keywords | 精神分裂病 / フェンサイクリジン / コカイン / 興奮性アミノ酸 / 抑制性アミノ酸 |
Research Abstract |
分裂病の動物モデルの作成にあたり、臨床的にヒトにおいて精神分裂病に類似した精神障害を惹起することが知られているフェンサイクリジン(PCP)およびコカインの2種類の精神異常惹起作用物質を選択し、以下の実験を行った。PCPに注目した実験では、(1)PCPが特異的に作用するPCP受容体の薬理学的特性について、ラット脳を用いてAutoradiography法により検討した。その結果、高親和性PCP受容体はNMDA(興奮性アミノ酸)受容体に作用する薬物(MK801)に対する親和性が強く、σ受容体に作用する薬物(SKF10047)に対して親和性は低かった。またPCP/NMDA受容体複合体のグルタミン酸およびグリシン作用部位やpolyamine作用部位に作用する薬物によるPCP受容体への阻害作用も認められた。(2)PCP関連物質(PCP-3-OH)を用いて、PCP受容体の多種性を指摘する報告があることから、この問題について検討した。その結果、PCP受容体には多種性は認められず、PCPが作用する部位は従来指摘されているPCP受容体の1種類であることを指摘した。また今後のPCP受容体研究では、従来用いられていたTCPやMK801を使用し実験することが可能であることが確認できた。(3)PCPの慢性投与によるラットの異常行動について検討した。その結果、メタンフェタミンやコカインと同様に自発運動量や立ち上がり運動の増加を認めたが、常同行動の出現は前2者ほど著明ではなかった。一方、swaying(頭部左右変換運動)やfalling(後方転倒運動)などのいわゆる失調性運動がPCPの投与により顕著に認められた。以上から、PCPの慢性投与による異常行動は、コカインのそれと異なる特性を有していた。コカインを用いた実験では、(1)コカインを慢性投与したラットをおいて、GABA受容体上のpicrotoxin作用部位の受容体結合能を[35S]t-butylbicyclophosphorothionate(TBPS)をリガンドとしてAutoradiography法により検討した。その結果、コカインの単回投与および慢性投与終了24時間後では、大脳皮質や線条体、海馬、小脳には[35S]TBPS結合能の有意な変化を認めなかった。一方、慢性投与終了1週間後の離脱期において大脳皮質のII-IV層及び海馬の歯状回において[35S]TBPS結合能の増加を認めた。以上から、GABA受容体はコカイン慢性投与の離脱症状の病態生理学的異常に関与していることが推察された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Suzuki: "Autoradiographic study on the pharmacological characteristics of [^3H]3-OH-PCP binding sites in rat brain" European Journal of Pharmacology. 310. 243-255 (1996)
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[Publications] T.Hori: "Effects of phencyclidine inetabolites on serotonin uptake in rat brain" Neuroscience Letters. 209. 153-156 (1996)