1997 Fiscal Year Annual Research Report
分裂病動物モデルにおけるNMDA,GABA受容体の生化学的,分子生物学的研究
Project/Area Number |
08671072
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 利人 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (10196850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 孝文 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40241822)
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Keywords | GABA / Benzodiazepine / receptors / mRNA / Rat / Brain / cocaine / Dependence |
Research Abstract |
コカインは動物において常同行動や自発運動の亢進を惹起し、ヒトで幻覚妄想や不安焦燥状態を起こす。作用機序として線条体や辺縁系におけるドーパミン神経系の再取り込み阻害が報告され、近年では線条体のc-fosやJun B、zif268などのImmeadiate-eary gene(IEG)の誘導が報告され、D1、D2受容体との関連性が検討されている。今回、我々はGABA_A-benzodiazepine(BZD)受容体複合体に注目し、コカインの急性および慢性投与による本受容体複合体のmRNA-subunitsの変化(α1、β2、γ2)について検討した。 S・D系雄性ラットにcocaine-HCl(20mg/kg)を、1日1回腹腔内投与した。急性投与群は投与1hr後に断頭した。慢性投与群は、2群に分けた。第1群では14日間の連投終了24hr後に、第2群では連投終了1週間後に断頭した。断頭後12μmの脳切片を作成し、-80℃に凍結保存した。GABA_A-BZD受容体複合体mRNA量は、[α-^<35>S]dATPでラベルしたoligonucleotide probeを用い、In situ hybridization法によりα1、β2、γ2subunit mRNAの変化を検討した。[^<35>S]TBPS結合能は、50mM Na/K phosphate bufferを用いてautoradiography法により行い、非特異的結合は10μM picrotoxinにより総結合能の3-5%であった。定量的解析には、storage phosphor imaging法によるBAS 5000((株)富士フィルム、東京)で用いた。測定は大脳皮質(帯状回、頭頂葉、側頭葉、)や海馬(CA1-3、歯状回)、視床、下丘、小脳で行った。 急性投与群では、α1およびβ2-subunits mRNAが大脳皮質、海馬、小脳で有意に低下していた。γ2-subunit mRNAも海馬で有意に低下していた。一方、慢性投与ではいずれの領域でも有意な変化はみられなかった。また連日投与終了1週間後(離脱状態下)ではβ2とγ2-subunits mRNAでは変化を認めなかったが、α1では大脳皮質で有意な増加を認めた。[^<35>S]TBPS結合能は、急性投与および慢性投与終了後1日後では有意な変化を認めなかったが、連日投与終了1週間後では、大脳皮質と海馬において有意な増加を認めた。コカイン投与に伴い一過性にドーパミン神経系の過活動状態が生じ、GABA神経系もGABAの遊離が増加すると考えられている。急性投与1時間後の各Subunit mRNA量は、各subunitが豊富に存在する大脳皮質、海馬、小脳において低下していたが、それらの変化は上記の変化による二次的な受容体生成の抑制を示唆していると考えられた。しかし[^<35>S]TBPS結合能は変化していないことから、mRNA subunitの変化は投与1時間後ではGABA_A-BZD受容体結合能に反映されていないと思われた。慢性投与後ではmRNA subunitおよび[^<35>S]TBPS結合能ともに有意な変化を認めなかった。したがってコカインの慢性投与により生じる過感受性状態では、GABA_A-BZD受容体複合体の関与は少ないと考えられた。
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Research Products
(1 results)