1996 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶剤による動因喪失症候群に関する神経科学的研究
Project/Area Number |
08671098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
福居 顕二 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (50165263)
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Keywords | 有機溶剤 / 神経毒性 / 海馬 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
ウィスター系雄性ラットを用い、1日4時間のトルエン吸入曝露を1・3カ月施行した。次いで床からの電気ショックによる受動・回避反応を用いた行動実験をおこない、学習障害(+)群と(-)群の2群に分け、その後、電子顕微鏡の実験に供した。おおよそ学習障害(+)群は3カ月曝露でみられ、学習障害(-)群は1カ月曝露群でみられた。両群を4%パラホルムアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝液)で灌流固定し、海馬・帯状回皮質・前頭葉を取り出し、オスミウム固定の後型通りにアセトンで脱水後、エポン包理した。超薄切片を作成し、鉛・酢酸ウラン染色を行い、変性の有無(細胞死、空胞変性の出現、細胞内小器官の形状の不整、シナプス形状の変化)を観察した。 電子顕微鏡では、学習障害(-)群では、海馬顆粒細胞層において各細胞間に電子密度の高いGlial filamentが伸展する像がみられたが、細胞体自体には明瞭な変化はみられなかった。学習障害(+)群において、海馬顆粒細胞において、細胞質内の小器官が減少ないし消失し、一見無構造に見えたり、時に空胞変性像・核膜の不鮮明像が観察され、細胞の変性像が電子顕微鏡で確認された。さらに、ヒトの有機溶剤乱用者でみられる無気力、記銘力の低下を含む認知機能障害などを主症状とする動因喪失症候群の責任病巣と考え得る領域、すなわち海馬以外の辺縁系である帯状回皮質および前頭葉においても海馬顆粒細胞と類似の所見が得られつつある。
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