1998 Fiscal Year Annual Research Report
難治性てんかん脳における遺伝子制御機構と発作感受性との相関についての解析
Project/Area Number |
08671100
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山上 榮 大阪市立大学, 医学部, 教授 (20047004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝元 栄一 大阪市立大学, 医学部, 助手 (90271189)
木岡 哲郎 大阪市立大学, 医学部, 講師 (40254396)
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Keywords | てんかん / ELマウス / グルタミン酸トランスポーター / in situe hybridization / mRNA / GLT-1 / GLAST / EAACI |
Research Abstract |
てんかんでは脳の興奮経路における活性の亢進あるいは抑制経路での活性低下による神経伝達物質の不均衡が生じている。前者は興奮性アミノ酸作動系のグルタミン酸であり、後者は抑制性アミノ酸作動系のγ-アミノ酪酸(GABA)である。グルタミン酸とGABAはともにシナップス後膜に存在する受容体に結合することによって、神経の伝達が行われるが、グリアあるいはシナップス終末に存在するトランスポーターに取り込まれることのよって不活性化させるといわれる。今回は、てんかん発作感受性を持つELマウス脳におけるグルタミン酸トランスポーター遺伝子の発現について検討した。 既にクローニングされている5つのグルタミン酸トランスポーターの中で、大脳で高い発現を認め、アストログリアに発現するGLT-1およびGLAST、神経細胞に発現するEAAC1について、生後24週齢の発作感受性を獲得したEL[s]同週齢で発作履歴のないEL[ns]、ELの母系で発作感受性を持たない同週齢のddYの3群で比較検討した。その結果、小脳を除く全脳ではEL[s].EL[ns]のGLT-l mRNA発現がddYの場合より増大した。GLAST、EAAClのmRNAは3群間で発現の相違は認められなかった。 またIn situe hybridizationにおいてはGLT-l mRNAはEL[s]とEL[ns]とが海馬と大脳皮質においてddYより発現が強かった。GLASTとEAAClは3群間で発現に部位差は観察されなかった。 これらの結果はGLT-lが発作感受性に関与することを示唆している。ELマウス脳では遺伝的にグルタミン酸の合成が活発であり、シナップス間隙でのグルタミン酸の増加を生じている。そのため、神経の細胞の興奮が生じ、発作感受性が亢進すると推測される。それに伴い、GET-lの活性は増大し、グルタミン酸の取り込みが増加し、ホメオスターシスにより発作を減少させようとするが、なお、それでもグルタミン酸量が高く保持されるので、十分な発作制御機構が働かない。そのため、ELマウスの発作感受性が高くなると考えられる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 梅本陽子,山上榮 他3名: "自然発症てんかん(EL)マウス脳の蛋白質合成系におよぼす発作の影響" 大阪てんかん研究会. 9. (1998)
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[Publications] 原田智行,山上榮 他4名: "GABAニューロンの遺伝子発現に及ぼす柴朴湯の影響" 大阪精神神経科漢方研究会誌. 2. 35-38 (1998)
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[Publications] T.Ozaki,S.Yamagami 他3名: "Distribution of Fos-and Jun related proteins and activator protein-1 composite factors in mouse brain induced by neuroleptics." Neuroscience. 84(4). 1187-1196 (1998)
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[Publications] T.Kai,S.Yamagami 他3名: "Developmental and regional alteration of K-opiod receptors in seizure susceptible EL mouse brain." Neurochem.Res. 23. 163-168 (1998)
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[Publications] 尾崎宜洋,山上榮 他3名: "抗精神病薬によって誘導されるc-fosおよびc-jun mRNAとBDNFmRNAの脳内発現についてのin situ hybridzationによる研究" 精神薬療基金研究年報. 29. 41-48 (1998)
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[Publications] 中西亜紀: "ELマウス脳から分離したpolysomal poly(A)^+ mRNAのin vitroの系での翻訳活性について" てんかん研究会. 16(3). 165-174 (1998)
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[Publications] 勝元栄一,山上榮 他3名: "メタンフェタミンおよびフェンサイクリジン投与によるHLF mRNA発現について" 神経化学. 37(3). 566 (1998)
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[Publications] 尾崎宜洋,山上榮 他3名: "NGF発現に見られる抗精神病薬の作用部位" 神経化学. 37(3). 473 (1998)