1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08671115
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Research Institution | KURUME UNIVERSITY |
Principal Investigator |
恵紙 英昭 久留米大学, 医学部, 助手 (40248406)
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Keywords | アルコール依存症 / Flumazenil / 遷延性離脱症候群 / 肝性脳症 |
Research Abstract |
アルコールは日常生活に密着した嗜好品でストレス解消や睡眠薬代わりに用いられ、その消費量が増加の一途を辿り、アルコール依存症で入退院を繰り返し社会生活が不可能になった患者が存在しており、アルコール依存症の治療の困難さが浮き彫りにされている。本研究ではこの難問に取り組むべくアルコール離脱症候群の画期的治療法を見出した。アルコール依存症は断酒後に、1)自律神経症状や離脱せん妄などの離脱症候群、2)ときに遷延する離脱せん妄、3)さらにアルコール性肝硬変が存在すると肝性脳症へ移行しやすい。これらは二次性痴呆などの重篤な後遺症を残す場合がある。今回これらを可能な限り減少させるために、1〜3)の症例を対象に新しい治療を試みた。通常断酒後にアルコールとの交差耐性を持つbenzodiazepine(BZP)系薬物の置換療法を行なうが、BZP置換療法を施行しても逆効果でせん妄が増悪し遷延する症例を認める。そこで遷延する離脱せん妄および海外でBZP受容体拮抗薬のflumazenil投与が有効とされる肝性脳症に対してflumazenil投与を行った。<対象>アルコール依存症と診断され入院した5名(肝性脳症2例、遷延性離脱症候群2例、早期離脱症候群1例)<投与方法>Flumazenil静脈内投与および点滴持続投与を行った。<結果>1,Flumazenilは肝性脳症およびBZP系薬物によって遷延化した肝性脳症の臨床症状と脳波を著明に改善させる効果を持つことが確認された。2,Flumazenilは遷延化した離脱せん妄の臨床症状および脳波にも有効であることが確認された。半減期が短いため持続点滴が有効であった。3,アルコール性肝硬変にBZP系薬物を投与した場合に肝性脳症を惹起する可能性があることが示された。4,離脱せん妄にBZP系薬物を長期投与すると意識障害を遷延化させる可能性があることが示された。よって本研究は新しい視点から見たアルコール依存症の治療法の発見であり、今後はさらにアルコール依存症の予防と治療における生物学的基礎研究および臨床研究に発展させたい。
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[Publications] 中沢洋一: "睡眠薬の変遷 -barbituratesからbenzodiazepinesへ-" 臨床精神薬理. 1. 899-906 (1998)
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[Publications] 辻丸秀策: "エタノールの行動リズムおよび体温リズムに及ぼす影響とその意義" 脳と精神の医学. 7. 73-84 (1996)
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[Publications] 恵紙英昭: "脳機能の解明-21世紀に向けて-" 九州大学出版会, 615 (1998)