1997 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病症状の発現に関与する神経回路異常の分子生物学的研究
Project/Area Number |
08671124
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Research Institution | National Instutitute of Neuroscience, NCNP |
Principal Investigator |
西川 徹 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第3部, 部長 (00198441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 勝宣 国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第三部, 室長 (40183850)
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Keywords | 精神分裂病(分裂病) / Methanphetamine / NMDA受容体チャンネル / 逆耐性現象 / アンチセンス法 / 大脳皮質 / RNA arbitrarily primed PCR / 生後発達 |
Research Abstract |
精神分裂病(分裂病)様症状を引き起こすamphetamine、methamphetamine(MAP)、cocaineなどを単回または反復投与したヒトおよび動物では、これらの薬物に対する感受性が亢進し、精神症状や異常行動が生じ易い状態が長期持続するようになるため(逆耐性現象)、分裂病の再燃のモデルと考えられている。そこで本研究では、分裂病の病態を解明するため、このような逆耐性現象に関与する神経回路の変化とその分子機構を解析している。 逆耐性現象は脳組織の破壊を伴わないことから、脳の可塑性に基づく変化と推測される。本年度は、海馬の長期増強や学習行動などの脳の可塑性において重要な役割を果たす、NMDA型グルタミン酸受容体のR2Bサブユニット遺伝子に対するアンチセンスオリゴDNAを脳室内に持続注入したラットにおいては、MAPを反復投与しても逆耐性現象が形成されないことを明らかにした。この効果はミスセンスプローブでは認めらず、アンチセンスオリゴDNA注入ラットの脳ではR2BmRNAの発現が低下していたことから、R2Bサブユニットを含むNMDA受容体が逆耐性の形成に必要なシグナルカスケードの一部に含まれる可能性がある。一方、逆耐性現象がラットでは生後21ないし25日以降にしか成立しないことに着目し、MAPに対してこの移行期の頃から応答するようになる遺伝子を、differential cloning法(RNA arbitrarily primed PCR法)および定量的RT-PCR法を使って探索した。このような性質をもつ数個のクローンが得られたが、いずれもこれまで報告のない新規の塩基配列をもつものであった。 そのうち一種については、大脳皮質に多く小脳や脳幹部では低い発現を示すことがわかり、遺伝子の全長に相当するcDNAの塩基配列を決定したところ、2つのsplicing acceptor sitesが認められた。現在、この遺伝子に対するアンチセンスオリゴDNAを脳室内に持続注入した動物で逆耐性の形成における意義を解析中である。
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[Publications] Matoba M,et al.: "Characterization of 5,7-dichlorokynurenate-insensitive [3H]D-serine binding to synapto-somal fraction isolated from rat brain tissues" J Neurochem,. 69. 399-405 (1997)
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[Publications] Tanaka K,et al.: "Epilepsy and exacerbation of brain injury in mice lacking the glutamate transporter GLT-1" Science. 276. 1699-1702 (1997)
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[Publications] Takahashi K,et al.: "In vivo evidence for the link between L-and D-serine metabolism in rat cerebral cortex" J Neurochem,. 69. 1286-1290 (1997)
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[Publications] Shirayama Y,: "Uncompetitive inhibition of [3H]-1,3-di-o-toly-guanidine defined sigma binding sites by desiparmine,propranolo and alprenolo in rat brain" Eur J Pharmacol,. 331. 319-323 (1997)
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[Publications] Sato D,et al.: "Developmental changes in distribution patterns of phencyclidine-induced c-Fos in rat forebrain" Neurosci Lett,. 239. 21-24 (1997)
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[Publications] 西川 徹他: "薬物依存「シナプス-可塑性」" Clinical Neuroscience. 94. 1158-1161 (1997)
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[Publications] 平岡秀一他: "「精神分裂病の動物モデル」特集『精神分裂病の最先端』" ブレインサイエンス. 8. 399-407 (1997)
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[Publications] 西川 徹他: "「現状と展望」特集『精神分裂病の最先端』" ブレインサイエンス. 8. 365-368 (1997)
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[Publications] 西川 徹他: "KEY WORD 1997-'98精神「(興奮性アミノ酸と精神分裂病)」" 先端医学社, 268(内2) (1997)
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[Publications] 黒田安計他: "専門医のための精神医学レビュー'98-最新主要文献と解説-(風祭 元監修)(「精神分裂病の生物学」)" (印刷中),
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[Publications] 黒田安計他: "精神分裂病と気分障害の治療手段-薬物療法のアルゴリズム-(佐藤光源,樋口輝彦編)(「抗精神病薬の作用機序」)" (印刷中),